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精神の障害年金は本当に目安どおりの障害等級に認定されるのか

統計データ

こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。

今回は、精神の障害年金で重要と言われている等級判定ガイドラインに関するお話です。

精神の障害年金の等級判定に関してはガイドラインの中で障害等級の目安が示されています。では、実際の判定はどの程度目安どおりに認定されているのでしょうか。そこで今回は、等級判定ガイドラインの目安と実際の認定状況との関係について、資料を基に解説します。

精神の障害年金における障害等級の目安とは

精神の障害年金については、等級判定が適正に行われるように、従来より運用している「障害認定基準」を補うかたちで「等級判定ガイドライン」が策定されています。このガイドラインは平成28年9月から運用されています。

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

このガイドラインの中に「障害等級の目安」という表があります。それが下の表です。

 

等級判定ガイドライン 表1 障害等級の目安

 

この表の見方については下の記事で詳しく解説していますが、ごく簡単に説明すると、診断書の記載内容から導き出した【判定平均】と【程度】を上の表に当てはめることによって障害等級の目安を知ることができるというものです。そして、これはあくまでも目安であって必ずしも目安どおりにはならない、との注意書きがあります。

つくし 精神の障害年金で外せない等級判定ガイドラインとは

では、実際のところどの程度目安どおりに認定されているのでしょうか。気になるところです。

 

障害年金業務統計について

厚生労働省で行われている社会保障審議会において、「障害年金の業務統計等について」という資料が提出されています。

社会保障審議会年金事業管理部会資料(第51回) 令和2年9月10日開催 (外部リンク)

この資料には令和元年度までに決定された障害年金の支給決定状況が掲載されており、目安どおりに障害等級が決定した割合についても掲載されています。この資料をもとに、障害等級の目安と実際の認定状況との関係を見ていきましょう。

 

9割以上で目安と同一の障害等級に認定されている

新規の場合

まずは、新規裁定における決定状況です。新規裁定とは、障害年金を受給していない人が請求する場合のことを指します。

等級判定ガイドライン施行後の3年間(平成29年度から令和元年度)の精神障害・知的障害に係る障害基礎年金・障害厚生年金の新規裁定件数全数(245,070件)のうち、障害等級の目安が設定されている区分にあてはまるケースは242,474件で、そのうちの223,383件(92.1%)で目安と同一の障害等級と認定されていました。

目安と障害認定の関係(新規裁定)

更新の場合

次に、再認定(更新時)における決定状況です。障害年金は永久認定された場合を除き、数年おきに更新する(再認定を受ける)必要があります。再認定とは、その更新のことを指します。

令和元年度の精神障害・知的障害に係る障害基礎年金・障害厚生年金の再認定件数全数(193,864件)のうち、障害等級の目安が設定されている区分にあてはまるケースは192,650件で、そのうちの182,409件(94.7%)で目安と同一の障害等級と認定されていました。

目安と障害認定の関係(再認定)

新規・更新とも9割以上で目安どおりに認定されていた

新規裁定においても再認定(更新時)においても、9割以上が目安と同一の障害等級に認定されていました。なお、目安の表の中には「1級又は2級」という複数の等級をしてしているマスがありますが、どちらかに認定されていれば目安の同一の障害等級となります。

 

目安の区分ごとの支給決定状況について

さらに、障害等級の目安の区分ごと(表のマス目ごと)の支給決定状況についても掲載されています。表内の数字の見方は下のとおりです。

  • 表の中の大きな数字:支給が決定した割合
  • 下の()内の数字:目安どおりの等級等となった割合

すなわち、目安どおりかどうかは表の中の一番下のカッコ内の数字を見ることになります。中央に大きく示されている数字の方ではありませんので気をつけましょう。

 

新規裁定におけるガイドライン区分ごとの支給決定状況

目安と障害認定の関係(新規裁定)

 

再認定におけるガイドライン区分ごとの支給決定状況

目安と障害認定の関係(再認定)

 

新規認定においても再認定(更新時)においても、大まかな傾向として、左上になるほど支給が決定している割合が高く、右下になるほど不支給になる割合が高くなっています。当然と言えば当然の結果ですね。

さらに、いくつかのマスを例にとって詳しく中身を見てみましょう。

● 最も左上のマス 3.5以上・(5)

このマスの目安は1級です。

新規裁定では、ここに該当した人のうち99.1%で受給決定しています。つまり残りの0.9%の人が不支給です。そして目安どおりに1級だったのは78.4%だったということから、おそらく残りの20.7%の人は2級に決定したと思われます(3級かもしれませんが)。

再認定においては、同様に考えると、79.0%で1級、20.9%で2級、0.1%で不支給だったと推測されます。

● 真ん中近くのマス 2.0以上2.5未満・(3)

このマスの目安は2級または3級(障害基礎年金の場合は2級または非該当)です。

新規裁定では、ここに該当した人のうち58.8%で受給決定していて、目安どおりに2級または3級(障害基礎年金で2級または非該当)だった人が93.3%います。

ただし、目安どおりに認定が93.3%とはいっても、障害基礎年金の目安は2級または非該当なので「目安どおりに2級」と「目安どおりに非該当」では大きな違いです。障害厚生年金においても2級と3級では額に大きな差があります。しかし、どちらに認定されたのかまでは分かりません

再認定においては、99.0%で支給決定となっています。一度は支給決定を受けたことがある人たちということで、新規裁定の場合と比較すると支給決定される割合は高くなっているのかもしれません。ただし、2級に決定したのか3級に決定したのかまでは分かりません。

● 下段の真ん中近くのマス 1.5未満・(2)

このマスの目安は非該当です。

新規裁定では、目安どおりに非該当だった人が92.9%います。目安とは異なる決定になった人は7.1%です。2級になった人がどの程度含まれるかは不明ですがそれほど多くはないと思われるので、おそらく3級が7.1%、不支給が92.9%でしょう。

再認定においては、同様の推測で3級が50.7%、不支給が49.3%です。やはり、一度は支給決定を受けたことがある人たちということで、新規裁定の場合と比較すると支給決定される割合は高くなっているのかもしれません。

 

約9割で目安どおりの障害等級に認定されていたが…

ここまで、公表されたデータから読み取れる内容について、推測を交えて解説しました。

目安どおりに認定されるかどうかは、目安の区分(表のマス)によって差があり、約2割で目安と異なる等級になっている区分もあれば99%で目安どおりの等級となっている区分もありますが、平均すれば約9割で目安どおりの障害等級に認定されていました。

しかし、区分によっては「〇級または〇級」という複数の目安が示されていますが、この資料ではそのどちらに認定されたのかまでは示されていないため、約9割で目安どおりに認定といっても、複数の目安のうちのどちらに認定されたのかまでは分かりませんでした

なお、等級判定ガイドラインには、「目安は、総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載されている他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得ることに留意して用いること」という注意書きがあります。この注意書きどおり、実際にも約1割では目安とは異なる認定結果になっていました

すなわち、障害等級の判定は目安だけではなく、診断書の日常生活能力以外の他の記載項目病歴・就労状況等申立書などの内容も踏まえて総合的に評価されていることを示していると考えることが出来ます。

目安の表はもちろん重要ですが、あくまでも目安であって、目安とおりに認定されないことが約1割あることを踏まえ、症状が正しく審査機関に伝わる書類を提出することを心がけましょう。

 

関連リンク

社会保障審議会(年金事業管理部会)|厚生労働省(外部リンク)

障害年金の業務統計等について|日本年金機構