こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金に関する様々な情報をお伝えしています。
今回は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会(年金部会)に関するお話です。
年金制度の検討は老齢年金がメイン
公的年金制度は、時代に応じて様々な検討や見直しが行われています。
高齢期の就労と年金受給の在り方(在職老齢年金)、短時間労働者への適用拡大、フリーランスや請負型で働く者への保障の在り方、第3号被保険者制度・・・ 検討すべき課題は色々あります。
このように、現在の公的年金の制度にはどのような課題があって、どのような解決方法がよいか、検討して提言をするのが、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の年金部会です。
ただし、年金の支給総額で大きな割合を占めるのは老齢年金です。したがって、給付については老齢年金のことをメインに考えて検討が行われています。
下の年金総額のグラフを見ても、老齢年金に目が行くのも仕方がないかな…と思います。老齢年金に関する制度を少し変更するだけで、支給総額に大きな影響を与える可能性があるからです。その一方で、障害年金は割合としてはごくわずかです。障害年金の制度を変更して支給額に変化があったとしても、年金総額に占める影響はそれほど大きくはないと考えられます。
しかし、令和1年12 月27日に出された「社会保障審議会年金部会における議論の整理」には、以下のような一文がありました。
今回行う制度改革は、働き方の多様化、高齢期の長期化に対応する観点から、主に老齢年金を射程とした改革となっている。しかし、公的年金制度については、障害年金・遺族年金についても、社会経済状況の変化に合わせて見直しを行う必要がないか検証し、その結果に基づいた対応についての検討を進めていくべきである 。
社会保障審議会年金部会における議論の整理(R1.12.27)
老齢年金の制度に着目した改革がメインではあるけれど、障害年金や遺族年金についても見直しを行う必要があれば検討を進めていくべきだ…とされています。
そして、ようやく障害年金についても検討しようという流れが出てきました。
障害年金の制度に関する議論が始まった
令和5年6月26日、社会保障審議会 年金部会が開催されました。
その議題として、「公的年金制度における次世代育成支援の取組について」とともに「障害年金制度について」が取り上げられました。
第5回社会保障審議会年金部会 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230626.html
その中で、主な論点として、次のような内容が取り上げられました。
- 厚生年金保険料を一定期間納めていた方について、保険事故の発生が厚生年金の被保険者期間中に存在しなくても、退職後それほど期間が経過していなければ、障害厚生年金の給付の対象にすることも検討の余地があるのではないか。
- 障害基礎年金か障害厚生年金のどちらを適用されるかは、障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金か厚生年金のいずれの被保険者であったかだけで決まり、それが生涯続くことによる弊害が出ている。例えば、けがで障害を負った後、退職してから障害年金を申請する場合(注:退職してから受診する場合の間違いと思われる)や、学生であるなど就労していない場合には、どれだけ長く働いていても、また、障害になった後に就労しても、障害基礎年金のみを受給することとなる。また、障害厚生年金の方が、給付額が多く、より軽い障害でも給付が受けられ、あるいは障害手当金(一時金)を受給できる等、様々な差がある。この差は、年金と自分の賃金で生活を成り立たせるという自立の問題・人の尊厳にもかかわる。
- 初診日の要件のほかにも、障害年金の目的をどう捉えるのかに加えて、医学モデルによるのか、社会モデルによるのかも含めて、障害年金の目的と認定基準との関係について議論する必要がある。その際は、他の障害者施策との関係性も視野に入れながら議論する必要がある。
- 障害年金については、支給要件をどうするのか、給付水準が妥当なのかどうかといった論点があり、また、受給者の中心が身体障害から精神障害に大きく変化している中、それに合わせて制度を見直す必要があるか否かについても検討の余地がある。
- いわゆる直近1年要件については、過去、10 年間の延長が繰り返されてきたが、そろそろ役割は終えているのではないか。
- 障害年金の見直しに向けた検討の進め方として、年金部会の下に少人数の委員会を設け、そこで議論した結果を基に年金部会で議論を進めてはどうか。
今後の議論には要注目ですね。
参考リンク
社会保障審議会(年金部会)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126721.html