こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。
今回は、精神の障害年金の診断書における、日常生活能力の程度の評価方法に関するお話です。
精神の障害用の診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」や「日常生活能力の程度」は、障害等級の目安を把握する上で重要な項目となっています。ここでは、「日常生活能力の程度」がどのような基準で評価されるのかを解説します。
日常生活能力の程度とは
日常生活能力の程度とは、診断書(精神の障害用)の一項目です。ここでは、日常生活全般における制限の度合いを5段階で評価することになっています。
クリックすると大きな画像が開きます。
日常生活能力の程度の評価欄は「精神障害」と「知的障害」の2つがあり、どちらか一方を使用します。
- 「① 障害の原因となった傷病名」欄に知的障害が含まれる場合→「知的障害」欄(下の欄)を使用
- 発達障害などで知的障害を伴っていて、「知的障害」欄の方が本人の状態を適切に評価できる場合→「知的障害」欄(下の欄)を使用
- 「① 障害の原因となった傷病名」欄に知的障害が含まれない場合→「精神障害」欄(上の欄)を使用
日常生活能力の程度には(1)から(5)の5段階の選択肢があり、どれか一つに〇がつけられます。ただの〇ですが、実はどこに〇がついているかは非常に重要な意味を持っています。
この項目の評価内容の重要性については、以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
日常生活能力の程度を評価する際の注意事項
日常生活能力の程度の評価方法は、障害年金の診断書を作成する医師向けに用意された記載要領の中で説明されています。
評価にあたっては、以下のことが注意事項として挙げられています。
- 入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居などにより、支援が常態化した環境下で日常生活が安定している場合であっても、単身でかつ支援がない状況で生活した場合を想定し、その場合の日常生活能力について記載すること
- 診察時(来院時)の一時的な状態ではなく、現症日の過去1年程度の障害状態の変動について、症状の好転と増悪の両方を勘案したうえで、当てはまるものを判断する
- 独居であっても、日常的に家族の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要性がある場合の状態を含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえ、能力の過大評価にならないように留意すること
日常生活能力の「判定」と「程度」は相互の整合性に留意
「日常生活能力の程度」は、同じく診断書(精神の障害用)の一項目である「日常生活能力の判定」と相互に関係していて、それぞれ次のような意義を持っています。
- 日常生活能力の判定
日常生活の7つの場面における制限度合いを、それぞれ具体的に評価するもの
- 日常生活能力の程度
「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合いを包括的に評価するもの
すなわち、「判定」と「程度」の2つの項目については、相互の整合性についても留意して記載することになっています。
しかし、7つの場面における制限度合いには顕著に表れないが、日常生活全般は大幅に制限されるなど、相互の関係が必ずしも整合しない場合もあり得ます。その場合は、整合しない理由を「⑪ 現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄にできるだけ具体的に記載することになっています。
日常生活能力の程度の評価基準
「日常生活能力の程度」の評価基準を下に示します。評価基準の内容を見ると、「日常生活能力の判定」の項目と連動していることが分かります。
精神障害など(知的障害を伴わない)
(1) | 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
|
(2) | 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
(たとえば、日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難を生じることがある。社会行動や自発的な行動が適切に出来 ないこともある。金銭管理はおおむねできる場合など。)
|
(3) | 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(たとえば、習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導 を必要とする。社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある。 金銭管理が困難な場合など。)
|
(4) | 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(たとえば、著しく適正を欠く行動が見受けられる。自発的な発言が少ない、あっても発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。金銭管理ができない場合など。)
|
(5) | 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
(たとえば、家庭内生活においても、食事や身のまわりのことを自発的にすることができない。また、在宅の場合に通院等の外出には、付き添いが必要な場合など。)
|
知的障害
(1) | 知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
|
(2) | 知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
(たとえば、簡単な漢字は読み書きができ、会話も意思の疎通が可能であるが、抽象的なことは難しい。身辺生活も一人でできる程度)
|
(3) | 知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(たとえば、ごく簡単な読み書きや計算はでき、助言などがあれば作業は可能である。具体的指示であれば理解ができ、身辺生活についてもおおむね一人でできる程度)
|
(4) | 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(たとえば、簡単な文字や数字は理解でき、保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し、身辺生活についても部分的にできる程度)
|
(5) | 知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
(たとえば、文字や数の理解力がほとんど無く、簡単な手伝いもできない。 言葉による意思の疎通がほとんど不可能であり、身辺生活の処理も一人ではできない程度)
|
関連リンク
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|厚生労働省 (外部リンク)
「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」等|厚生労働省(外部リンク)
精神の障害用の診断書を提出するとき|厚生労働省(外部リンク)