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「医師の判定を破棄」と報じられた障害年金審査について ― その調査結果とは

医師の判定を破棄?ウワサの検証結果

こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金に関する様々な情報をお伝えしています。

令和7年の年末に、障害年金の審査において作成される「認定調書」を機構職員がひそかに破棄していたといった報道がありました。これを受けて、厚生労働省から当該事案についての調査結果が公表されました。

今回は、その報道と調査結果を整理します。

障害年金「認定調書」の取り扱いに関する調査の背景

令和7年12月28日、共同通信から障害年金、医師の判定を破棄 機構職員、ひそかにやり直しとの報道がありました。

この報道は、障害年金の認定審査において、認定医が作成した支給の可否に関する判定文書(正しくは「認定調書」といいます)が、日本年金機構の職員によって適切に扱われず、一部廃棄されていた可能性があるとの指摘でした。これは、認定の審査プロセスの透明性や適正性が疑われる重要な内容として、社会的に大きな関心を集めました。

そこで、厚生労働省では、調査時点で残っている記録の確認を行い、このほど調査結果が公表されました。

調査結果の全体像

認定調書の取り扱いに関する調査結果は、PDF3枚にまとめられて公表されました。

障害年金における認定調書の取扱いについて
障害年金における認定調書の取扱いについて
障害年金における認定調書の取扱いについて

障害年金における認定調書の取扱いについて|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/001633450.pdf

認定調書の一部破棄は本当だった ただし問題はなかった

認定調書の取り扱いについて(今まで)

認定調書の取扱いについて、日本年金機構 障害年金センターにおいては、以下の取り扱いを行っていたことが確認されました。

認定調書の取り扱い
  • 認定医が記載した認定調書に誤り疑義が生じた場合、①再度同じ認定医に審査を依頼する、②別の認定医に審査を依頼し直す、いずれかの取扱いを行っている
  • 審査の依頼し直しについて、特段の判断基準は定まっていなかったものの、令和6年5月からは、グループ長が確認する取扱いとなっていた
  • やり直しの結果、不要となった当初の認定調書の取り扱いについて、日本年金機構の文書管理の規程では明確化されていなかったが、実務上、令和6年5月からは、3か月保管の上、廃棄する取扱いとなっていた

すなわち、「審査のやり直しが行われた際に、当初の認定調書は破棄されていた」という報道は事実だったようです。

もちろん、誤りや疑義は、認定プロセスにおいて起き得るものでしょう。誰だってミスはしてしまうものです。

そして、ミスが判明した際に、正しい認定を行うために審査のやり直しをするのも必要なことといえます。ミスをそのまま放置するのはダメですよね。

さて、審査のやり直しを行う際に、同じ認定医ではなく別の認定医に依頼する理由は以下のとおりでした。

別の認定医に依頼した理由
  • 認定調書に誤りや疑義があり、当初の認定医に確認の必要があったが、対面での審査が基本な中、標準的な処理期間(請求書を受理してから年金証書が届くまでの標準的な処理期間。障害年金は3か月)を遵守する観点から、主にスケジュールとの関係で別の認定医に依頼した

すなわち、

「対面での審査を終えた後で、機構職員が『これっておかしくない…?』と気づいた。しかし、当初の認定医に確認しようとすると、その認定医の都合上、すぐに確認できずに時間がかかってしまう。お約束の『3か月以内に結果をご本人にお渡しする』という期限を過ぎてしまう。そこで、すぐに依頼できる別の認定医に依頼した。」

ということのようです。

審査のやり直しで、むしろ正しく審査されていた

令和6年5月以降、認定調書に誤りや疑義が生じ、審査を依頼し直した件数は、約7,500件でした。

令和6年度以降の決定件数は約79万件なので、全体の約0.9%で審査の依頼し直しがあったことになります。

今回の調査では、認定が終了し障害年金センターで原議が確認できる令和7年10月以降分の全ての認定調書(811件)が調査されました。その調査結果は以下のとおりです。

分類当初の判断結果最終の判断結果同一の認定医異なる認定医総件数
1不支給・支給停止・却下支給26件94件120件
2支給不支給・支給停止・却下22件11件33件
3支給支給(同等級)95件89件184件
4支給支給(上位等級)5件43件48件
5支給支給(下位等級)22件6件28件
6不支給・支給停止・却下不支給・支給停止・却下75件39件114件
7まだ判断していない支給55件187件242件
8まだ判断していない不支給・支給停止・却下18件24件42件
318件493件811件

上記の中で気になるのは、当初の判断結果は「支給」や「未判断」で、異なる認定医による審査の結果、「不支給・支給停止・却下」や「下位等級に変更」となった事案でしょう。

もしかして、本来は「支給」されるべき事案だったのに、わざわざ別の医師に審査してもらって「不支給」へと持って行ったのではないか…という疑念が生じたのです。

そこで、この41件(分類2の11件、分類5の6件、分類8の24件の合計)について、今回、最終的な判断結果が妥当であったかどうかを医療専門役(常勤医師)に確認したところ、疑義はない(正しく審査されている)との結論が得られました。

ちなみに、この41件について、なぜ審査のやり直しをすることになったのか、「誤りや疑義」の内容は以下のとおりです。

当初判断の後に生じた「誤りや疑義」とは

①単純な記載誤りや認定基準の読み誤り

  • 認定医が、障害等級を記載する欄を間違ってしまった
  • 外部障害で、認定要領上は3級相当の障害であったが、2級としてしまっていた

②判断理由の記載の趣旨を確認する必要があった

  • 再認定事案において、当初の認定医は増額改定と判断していたが、診断書の記載内容が前回と変わらないため、理由を確認する必要があった
  • 理由の記載内容と申請書類から読み取れる事実との関係など、趣旨を確認する必要があった

③関係書類の不備や確認漏れがあった

  • 初診日を確認する資料が整っていなかったことがわかった
  • 初診日を確認する資料が整っていたが、職員や認定医が初診日資料の確認漏れをし、請求者への追加資料の提出を求めようとしていた
  • 医療機関への照会指示があったが、既に何度か照会をしているなど、更なる照会の必要性の趣旨の確認が必要であった

当初の共同通信からの報道であったような、 “医師の主観や個人差があるため、支給・不支給の判定に対し職員が「甘すぎる」「厳しすぎる」と判断した場合、記録をシュレッダーなどで廃棄。” という恣意的な理由ではなさそうです。

なお、当初の判断結果は「不支給・支給停止・却下」だったものが、審査のやり直しで「支給」につながったものも多数あります。(上表の分類1、26件+94件)

これは、機構職員が疑義や誤りに気づいてくれたからこそのファインプレーとも言えます。(当たり前と言えば当たり前ですが…。)

障害年金の認定をより客観的・公平なものへの対応策

認定プロセスの客観性・公平性を確保するため、今後は、以下の対応が取られることとなりました。

今後の対応
  • 別の認定医に審査を依頼する場合には、審査に当たっては当初の認定医の意見も活かし、複数の認定医による審査の対象とする
  • 当初の認定調書は審査資料として保存の対象となる

今回実施した認定調書を活用した調査は、現段階で把握可能な認定調書を活用した調査であることから、さらにこうした業務に従事していた障害年金センターの職員を対象に、令和6年5月以前の分も含めてヒアリング調査を行い、不適切な取扱いがなかったか確認を行うようです。

そして、ヒアリング調査を実施した後、新たな対応方針を検討・策定し、調査結果と併せて、令和8年4月月末に公表される予定となりました。

当事務所からのメッセージ

今回の報道と調査は、障害年金制度の信頼性や認定プロセスの透明性について、改めて考える契機となりました。

調査の結果、最終的な認定結果そのものに問題はなかったとされていますが、一方で、いったん認定医によって作成された文書が明確な規定がないまま廃棄されていた点については、課題として指摘されています。

こうした指摘を受け、日本年金機構では、認定プロセスの透明性を高めるための対応策を講じるとしています。
制度がより分かりやすく、公平で、安心して利用できるものへと改善されていくことが期待されます。

当事務所としても、今後の動向を注視しながら、障害年金を必要とされる方が適切な認定を受けられるよう、引き続き丁寧なサポートを行ってまいります。

参考リンク

2026年1月16日
障害年金における認定調書の取扱いについての調査結果を公表します|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00221.html

2026年1月16日
障害年金における認定調書の取扱いについて|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/001633450.pdf

2025年12月28日
【独自】障害年金、医師の判定を破棄 機構職員、ひそかにやり直し|共同通信
https://www.47news.jp/13659652.html