概要
傷病名 | 慢性腎不全 |
年代 | 50代 |
経緯 | 高校の学校検診で尿タンパクが検出され、検査の結果、IgA腎症と診断。 経過観察を継続。50代で人工透析を開始。 |
決定年金 | 障害基礎年金2級 |
年金額 | 78万円 |
ご依頼までの経緯
高校の学校検診で尿タンパクが検出され、総合病院で検査した結果、IgA腎症と診断されました。その後、ずっと経過観察を継続していました。途中、体調不良で何度か入院したこともありました。
徐々に腎機能が悪化し、50代で人工透析を開始しました。
初診日が30年以上前で証明が大変そうなこと、日中は仕事へ行き夜間に血液透析に通院するという生活で忙しいことから、弊所に手続きのご依頼をいただきました。
当事務所での対応
週2回の人工透析を行い症状は安定していることから、障害の程度は2級相当と思われました。
よって検討すべきことは、初診日をどのように考えるか、その初診日をどのように証明するか、この二点です。
当初の初診日は今から30年以上前の高校生の時です。その後、社会人となり、ずっと正社員としての勤務を続けていましたので、社会的治癒(※)の考え方が適用できないかと考えました。
※ 社会的治癒があった場合、再発後の再受診日が初診日となるため、障害厚生年金の適用となる可能性があります。社会的治癒には、「医学的には治癒していなくても、社会的な観点では治癒していたとみなせる期間があった」ことを証明し、認められることが必要です。
この方の場合、空白期間なく通院を継続して服薬も続けており、明らかな状態変化があった時期を断定することも困難な状況でした。
ご本人と相談し、社会的治癒は主張せず、高校生のときを初診日として準備を進めることにしました。(なお、高校生が初診日の場合、20歳前傷病による障害基礎年金となることから所得制限にかかる場合もあり得るため、その点も確認した上で方針を決定しました。)
早速、初診日から約10年間継続して通院していた病院に、受診状況等証明書の作成をお願いに行きました。しかし、最終受診日から20年以上も経過していたこともあり、残念ながらカルテは破棄されていて、証明書を作成していただくことはできませんでした。
作成を断られたその足で、転院先のクリニックに向かいました。
転院先は、初診の病院の勤務医だった先生が独立開業したクリニックです。通院歴はご存じのはずですので、前医での初診からの経過をできる限り詳細に受診状況等証明書に盛り込んでいただくようお願いしました。
すると、診察室に通され、先生から「高校生の時の話なんて、今更いらなんじゃないの?」とのご質問がありました。そこで、受診状況等証明書の趣旨を説明したところ、過去のカルテを確認して下さり、紹介状はないものの、高校生の時のことも書けるとの返事をいただきました。
できあがった受診状況等証明書の⑤欄(発病から初診までの経過)には、「昭和○年4月 学校検診で尿タンパク。同年5月 ○○病院に入院し、IgA腎症と診断。」との記載があり、「1. 初診日の診療録から記載したものです。」に〇印がありました。
診断書などその他の書類も準備し、ご依頼いただいてから約1か月後には障害年金の請求書一式を提出することができました。
結果
障害基礎年金2級に認められました。
コメント
初診日がかなり前の場合、その証明に苦労することがあります。
初診の医療機関からの受診状況等証明書が得られない場合の方法には様々なものがありますが、その中に「請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができることとする。」というものがあります。(下記の「参考リンク」を参照のこと。)
この事例では、請求の20年以上前からクリニックに通院しています。その通院開始時に作成された診療録に高校生の時の受診歴が記載されていました。その診療録を基にして作成された受診状況等証明書ですから、初診日の証明としては十分に有効なものとして認定されました。
参考リンク
「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」の一部改正について(平成31年2月1日・年管管発0201第8号)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3901&dataType=1&pageNo=1
障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて(平成27年9月28日・年管管発0928第6号)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1413&dataType=1&pageNo=1
※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。