概要
傷病名 | うつ病 |
年代 | 40代 |
経緯 | 20代の頃、交通事故にて足を負傷。 リハビリによって足はかなり良くなったが、事故のショックでPTDSを発症し、外出困難となる。 抑うつ状態が長く続き、日常生活もままならない状態で20年近く閉居している。 |
決定年金 | 障害基礎年金2級 |
年金額 | 78万円 |
ご依頼までの経緯
20代の頃、歩行中に曲がり角で出合い頭に車と衝突。足を骨折するなどしましたが、リハビリによって身体の状態はかなり改善しました。
しかし、事故のショックでPTDSを発症し、フラッシュバックに苦しみ、車に対する恐怖心も強く、外出困難な状況が続きました。
事故から10年ほど過ぎ、障害年金の手続きをしようと年金事務所に相談したところ、交通事故の日を初診日とすると保険料の納付要件を満たさないと言われ、診断書の準備までしたものの、提出せずに諦めていました。
それからさらに10年近く経ち、もう一度障害年金のことを進めてみようと考え、当事務所にご連絡をいただきました。
当事務所での対応
念のため被保険者記録を確認したところ、やはり交通事故で救急搬送された日が初診日では保険料の納付要件を満たしませんでした。
しかし、通院歴などを詳しくお聞きしたところ、当初は足の骨折などに対する治療のために整形外科などを受診しており、PTSDの症状を訴えて精神科を受診したのは事故から1年以上過ぎてのことでした。
精神科の受診時を初診日とすると、保険料の納付要件を満たします。
障害年金の初診日は、相当因果関係がある傷病が先に発症している場合は前後を合わせて同一傷病として扱い、先に発症した傷病の初診日を用いることになっています。具体例として、「事故による傷病」と「その傷病による精神障害」は同一傷病と扱われるとされています。
相当因果関係の具体例について解説している、日本年金機構のもともとの文書を確認してみました。それには、このように記載されていました。
事故又は脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係ありとして取り扱います。
これについてよ~く考えてみると、事故や脳血管疾患によって脳が損傷を受け、「器質性精神障害(高次脳機能障害など)」を生じたことを指しているのではないか?と思えてきました。つまり、「事故によるケガ」ではなく「事故そのものから受けた恐怖等」によって精神疾患を発症した場合は相当因果関係には含んでいないのではないか・・・?
この事例の方の場合、事故によって足を骨折するなどしましたが、いわゆる身体のケガの方はリハビリによってかなり回復しました。また、事故の時に頭部に衝撃を受けてはいるものの、脳には異常はありませんでした。それよりも、車に衝突されたという出来事によって心に受けた衝撃の方が大きいのです。
どのように審査されるか分かりませんでしたが、抑うつ気分、不眠、食欲低下、希死念慮を訴えて初めて受診した日を初診日として書類を整備することにしました。
さて、以前にご本人が障害年金を請求しようとしたときに診断書を作成してもらっていました。(提出せずに手元に残っていました。)その時の傷病名は「摂食障害、心的外傷後ストレス障害」でした。
障害年金は、障害認定基準に「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象にならない。」とされています。摂食障害も心的外傷後ストレス障害も神経症に準じて取り扱われます。
今回、初診日がずれたことから障害認定日もずれました。当時の医療機関に問い合わせると、カルテは残っているので障害認定日の診断書を作成することはできるけれど、傷病名は当時のカルテから書き起こすため「摂食障害、心的外傷後ストレス障害」のままにならざるを得ず、うつ病の病態を示しているとの追記も不可能とのことでした。
請求日の診断書は「うつ病」として出来上がってきました。
こちらに関してもどのように審査されるか分かりませんでしたが、障害認定日の頃からずっと抑うつ気分などの症状が継続していることを申立書で主張し、障害認定日に遡及して障害年金を請求しました。
結果
初診日を(事故の日ではなく)精神疾患で初めて受診した日とし、事後重症で障害基礎年金2級に認定されました。
コメント
残念ながら、障害認定日は「精神病の病態を示していない」として認められませんでした。審査請求も行いましたが同様の理由で棄却されました。
しかし、事故を原因とする精神障害であっても、「症状性を含む器質性精神障害」ではなく「気分(感情)障害」の場合には、事故と精神障害には相当因果関係はないものとするのか、その理由は定かではありませんが、精神疾患に関する症状を訴えて初めて受診した日を初診日として認定してもらうことができました。
年金事務所で一度は無理だと言われても、諦めずに当事務所ににご相談いただいて本当に良かったです。
※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。