概要
傷病名 | うつ病 |
年代 | 40代 |
経緯 | オーバーワークにより抑うつ状態となり、精神科に約2か月間入院し、退職。しばらく静養後に再就職。 順調に昇給するなど調子のよい期間が7年ほど続くが、再び抑うつ状態となり、精神科を再受診。 以降、ひきこもりの状態が続いている。離婚し、実家からも同居を拒否され、単身生活。 |
決定年金 | 障害厚生年金2級(遡及) |
年金額 | 159万円(初回入金987万円) |
ご依頼までの経緯
大学卒業後、上京してWEBデザイナーとして仕事をしていましたが、オーバーワークにより抑うつ状態となり、心療内科(A医院)を受診。現実から逃れたい一心で、自ら希望して精神科(B病院)に約2か月間入院しました。仕事は辞め、2年ほど静養した後、再就職しました。精神科の通院は不要となりました。
その後は大きな仕事を任されるなど順調に昇給し、私生活では結婚してマンションも購入し、調子のよい期間が7年ほど続きました。
しかし、会社のM&Aにより社風が変わったことから業務が思うように進まなくなっていきました。徐々に不安焦燥感、抑うつ気分がひどくなり、責任感から無理して出社していましたが、それもとうとう限界に達して精神科(C医院)を再受診しました。
それ以降、ひきこもりの状態となりました。10年間ほどは配偶者さんがサポートしていましたが、それも難しくなって離婚し、実家に戻りました(D医院に転院)。しかし、父は疾病に理解がなく怒鳴るばかり。間に入る母もストレスから体調を崩してしまい、やむなく実家そばにアパートを借りての単身生活を送ることになりましたが、生活は破綻寸前です。
ようやく障害年金の制度にたどり着き、弊所にご依頼いただきました。
当事務所での対応
ご相談いただいた当初は、ご本人は最初の受診(A医院、B病院)のことをすっかり忘れていました。
その状態で、これまでの経過をお聞きした結果、初診はC医院と判断し、そこから1年6か月後の障害認定日の頃(同じくC医院)も状態は良くなかったことから、障害認定日による請求(遡及請求)をする方針となりました。
早速、C医院に連絡を取ってみると、「診断書は書けますが、〇年頃にうつ病で通院や入院をしていたと聞いていますので、そちらが初診ではありませんか?」とのお話があり、びっくり!
ご本人にお伝えしたところ、ようやく「そう言えば、確かにそんなことがありました。かなり昔のこと(20年近く前)なので忘れていました。」と思い出していただきました。
ところが、A医院にはカルテが残っておらず、B病院については病院の名称を思い出すことができず、調べようがありません。しかも、仮にその頃が初診日だとすると、保険料の納付要件を満たしません。
病歴を改めて確認してみると、B病院の受診を終了し、再就職してからは、順調な期間が7年ほどあります。厚生年金保険の記録を見ると、順調に昇給していてそれなりのお給料だったことも見て取れます。
そこで、いわゆる社会的治癒があったものとして、C医院を再発後の初診として準備を進めることになりました。
ご本人に当時のことを思い出していただき、その内容を参考に社会的治癒に関する申立書を作成し、参考資料を添付しました。
また、現在は単身生活であることから、そのいきさつを病歴・就労状況等申立書に丁寧に記載しました。
結果
C医院を初診日として、障害認定日(請求日から約10年前)に遡及して障害厚生年金2級と認められました。(支給は過去5年分のみ。)
コメント
障害年金の準備を進める過程で、忘れていた受診歴が出てくることがあります。
そのような場合であっても、病歴を丁寧にヒアリングし、その事例にふさわしい請求方針を立てて進めていくことが大切です。
この事例では、最初の受診を初診日とするとカルテ破棄により遡及請求ができず、そもそも保険料納付要件を満たせないという事情がありました。
しかし、このような事情がなかったとしても、その後に7年間の通院不要の期間があったことから、いったん治癒した後の再受診が初診日であるとする判断は当然だったと思います。
もちろん、診断書に最初の受診歴が記載されている以上、当然のことを正しく認定してもらえるよう、万が一に備えて申立書などでしっかり説明することも大切です。
※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。