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事例42【発達障害】障害基礎年金2級に認定された事例

発達障害の事例

概要

傷病名適応障害・広汎性発達障害
年代20代
経緯幼少期から困りごとが多かったものの、両親の期待に応えようと努力を続け、大学へ進学。
大学2年時に引きこもりとなり、21歳で初診。
4か所目の医療機関で心理検査し、ASDとADHD(知的障害なし)と診断。
障害認定日の頃から単身生活だが、近隣に住む母からの支援あり。
決定年金障害基礎年金2級
年金額78万円(初回振込91万円)

ご依頼までの経緯

幼少期より片付けが苦手だったり抽象的な概念を理解するのが苦手だったりしましたが、両親の期待に応えようと頑張ってきました。中学では学級委員や部活の部長をし、高校は進学校に入学、大学にも進学しました。バイトにも精を出しました。

大学2年時、交際相手と上手くいかなくなったことをきっかけに、気分の落ち込み、動悸、パニック発作などが出現。引きこもり、情緒不安定となって精神科を受診しました。大学は休学の末、中退しました。

転居などを理由に転院があり、精神科は5か所に行きましたが、診断名は複雑性PTSD、適応障害、広汎性発達障害と変遷しました。4か所目の医療機関で心理検査を受け、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)との診断を聞いて、自分がずっと大変だったのはこのせいだったのかと納得したそうです。

一人での請求は困難であるとして、弊所に手続きのご依頼をいただきました。

当事務所での対応

現在通院中の先生に診断書を依頼したところ、障害認定日の診断書を参考にしたいので、そちらの診断書を先にとってきてほしいとのことでした。そこで、まずは障害認定日の診断書を取得しました。

障害認定日の診断書は下記のようになっていました。

①障害の原因となる傷病名:「適応障害」
④既存障害・⑤既往症:いずれも空欄
⑩ア現在の病状:「Ⅰ抑うつ状態」「Ⅷ 発達障害関連症状」などの項目にチェック
⑩カ臨床検査:「心理検査の結果、知的障害はないが、顕著な自閉症スペクトラム障害と注意欠如多動性障害がある。」
⑬備考:「GHなどの第三者機関に入所して生活全般の立て直しを図るべき状況である。」(傷病名に関する記載なし)

できれば①は適応障害(※)ではなく自閉症スペクトラム障害などにしてほしかったところですが、当時のカルテからこのように記載せざるを得ないとのことで、このままとなりました。

※ 適応障害(ICD-10コード:F43)などの神経症圏の傷病名の場合は、原則として障害年金の対象外です。

この診断書を現在の先生のところにお持ちしたところ、先生も「発達障害で作成されるかと思った!」と衝撃を受けていらっしゃいました。

現在の診断書は「広汎性発達障害」で作成され、日常生活能力の判定と程度は障害認定日の診断書とまったく同一の箇所にチェックがつけられていました。

障害認定日の頃から現在まで単身生活ですが、近隣に住むお母さまからの支援を受けて生活していましたので、支援の状況を診断書にしっかりと反映していただき、病歴・就労状況等申立書にも単身生活となるいきさつや生活状況を分かりやすく記載しました。

結果

障害認定日に遡及して障害基礎年金2級に認定されました。

コメント

神経症圏の傷病名の場合、原則として認定の対象とならないとされています。ただし、統合失調症や気分(感情)障害などの精神病の病態を示している場合には、⑬備考欄にその旨と示している病態のICD-10コードを記入することで、それらの傷病に準じて取り扱われることになっています。

本事例では、神経症圏の傷病(適応障害)に併発している傷病は統合失調症や気分障害ではなく発達障害(ASD、ADHD)で、その発達障害のICD-10コードの記載はどこにもありませんでした。

しかし、診断書全体から発達障害があることが読み取れること、発達障害は一般的に生来性と考えられていることから、障害認定日の診断書の傷病名は適応障害でしたが、障害認定日に遡及して認定されました。

※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。