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障害年金における病歴・就労状況等申立書の役割とは

病歴・就労状況等申立書

こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。

今回は、病歴・就労状況等申立書の役割について解説します。障害年金の審査には診断書が重要であって、病歴・就労状況等申立書は意味がないという人もいますが、果たして本当でしょうか。

病歴・就労状況等申立書とは

病歴・就労状況等申立書とは、障害年金の請求には必ず提出しなければならない書類の一つです。原則の様式はA3サイズの両面印刷になっており、おもて面に病歴、うら面に就労状況や日常生活状況などを記入するようになっています。

病歴・就労状況等申立書

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病歴・就労状況等申立書の役割とは

障害年金の審査はすべて書類審査です。障害年金を申請する際には様々な書類を提出しますが、提出された書類だけで審査することになっており、面接などの対面審査は行いません。

その書類の中でも医師が作成する「診断書」は等級判定において重要な役割を担っていると言われています。「障害年金は診断書でほぼ決定する」という人もいます。

確かに、第三者であり専門家である医師が作成した書類には信憑性があります。それでは、本人が作成する「病歴・就労状況等申立書」は意味がないのでしょうか。

そんなことはありません。障害年金の申請時に提出を求められているのは、それが必要だからです。では、どのような場面で必要とされるのでしょうか。

病歴・就労状況等申立書を提出する役割は次のようなもとだと考えられています。

病歴・就労状況等申立書の役割
  1.  初診日を証明する上での参考資料とする
  2.  障害状態が継続していること(または継続していない)を示す
  3.  診断書だけでは伝えきれない障害状態や援助の状況を示す

それぞれの意味を順番に見ていきましょう。

役割1 初診日を証明する上での参考資料とする

障害年金において、初診日の証明は非常に重要です。初診日の証明が出来なければ障害年金の受給は非常に困難なものとなります。(知的障害を除きます)

初診日の証明は、通常は「受診状況等証明書」を初診の医療機関に作成してもらうことによって行います。

しかし、「受診状況等証明書」だけでは、証明書に書かれた受診が本当に初めての受診だったのかどうかまでは分からないとも言えます。もしかしたら、それよりも前に別の医療機関で受診していたのかもしれません。場合によっては「それ以前の受診があるのはないか?」との疑念を抱かれることもあります。

また、今回申請する疾病の他に既往症があると、既往症の方で初めて受診した日を初診とするべきとの判断がなされることもあります。

そこで、症状に気づいてから受診に至るまでの様子を「病歴・就労状況等申立書」に記入することとによって、初診日のもっともらしさを主張するのです。

もちろん、初診日の判定において受診状況等証明書や診断書の記載内容は大切です。あらぬ疑念を抱かれないように、受診状況等証明書や診断書に「当院の前に受診なし」や「既往症と当該疾病には因果関係がない」などの記載が必要なこともあります。これにプラスして、病歴(受診に至る経緯)を丁寧に記入することによって、初診日を証明するための有力な参考資料の一つとなるのです。

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役割2 障害状態が継続している(または継続していない)ことを示す

この役割は、内科的疾患や精神障害の場合や、障害認定日からかなり経過してから遡及請求する場合、社会的治癒を主張する場合などに特に重要になります。

障害状態の認定基準には、内科的疾患においては「当該疾病の認定の時期以後、少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって…」という文言があり、精神障害や内科的疾患においては「治療およびその病状の経過…」という文言があります。

すなわち、一時的な悪化ではないことを審査側に分かってもらう必要があります。

かなり前の障害認定日にさかのぼって遡及請求するような場合は、障害認定日の後も障害状態が継続しているのか、それとも症状が軽快した時期があったのかの判断が必要とされます。経過によっては、途中での等級変更を要する(支給停止など)と判断されることもあります。そこで、病歴を順を追って丁寧に記入することによって、障害状態が継続していたことを主張します。

逆に、いったんは症状が軽快して社会的治癒の状態であったことを主張したい場合があります。この場合は、障害状態がある程度の期間治まり、通常の生活を送っていた時期があったことを主張することになります。

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役割3 診断書だけでは伝えきれない障害状態や援助の状況を示す

障害状態を判断するのに最も有力なのは「診断書」であることには間違いありません。しかし、診断書にも限界があります。特に、日常生活の様子や就労の状況は診断書だけでは不足する情報だと言えます。

障害等級の審査においてそこまで確認するかどうかは分かりませんが、住民票や厚生年金保険の加入状況を見れば、ひとり暮らしかどうか、働いているかどうかは審査側も容易に知ることが出来ます。

「ひとり暮らしをしている」「働いている」状態は、どうしても障害状態が軽いと判断されかねない、マイナス要因とされています。しかし現実には、ひとり暮らしによって生活が破綻していたり、周囲の人からの援助によって生活できている場合があります。就労先での配慮によって働き続けていることが出来ていたり、在籍しているだけで休職中だったりする場合があります。

このような、診断書だけでは分からないような普段の日常生活の様子や就労の様子を、病歴・就労状況等申立書によって審査側に伝えることが出来るのです。

病歴・就労状況等申立書も大切な資料の一つ

病歴・就労状況等申立書は、A3サイズの両面ということで分量もそれなりにあり、3~5年おきに区切って病歴を書くなどのルールがあったりして、作成にはかなりの時間を要します。診断書でほぼ決まるのなら、こんなに苦労して病歴・就労状況等申立書を作成する意味があるのだろうかと嫌になってしまうかもしれません。

しかし、上で見てきたように、病歴・就労状況等申立書は様々な役割がある大切な資料の一つです。その役割を考えて、ぜひ、放り出さずに取り組んでみてください。

病歴・就労状況等申立書を作成するコツは「審査側の気持ちになってみる」ことです。診断書や受診状況等証明書と合わせて読んでみた時に、辻褄の合わないところはないか、不足する部分が補強できているか、そんな気持ちで作成してみてください。