概要
傷病名 | 変形性股関節症 |
年代 | 40代 |
経緯 | 22歳のとき右股関節に痛みと違和感を感じて受診したところ、両臼蓋形成不全と診断された。 年1回の経過観察を続け、症状に応じて鎮痛剤を服薬しながら就労を継続。 20代で右回転臼蓋骨切り術、30代で左回転臼蓋骨切り術、40代で右人工股関節置換術。 |
決定年金 | 障害厚生年金3級 |
年金額 | 58万円 |
ご依頼までの経緯
股関節に違和感を感じて初めて医療機関を受診したのが22歳の時で、今から26年前のことでした。その時からずっと同じ主治医の下で経過観察を続けてきました。(主治医の転勤に伴い、途中で転院。)
当初の診断名は「両臼蓋形成不全」で、症状を見ながら20代で右回転臼蓋骨切り術、30代で左回転臼蓋骨切り術を受けました。
48歳の時、右股関節の痛みが強くなり、検査の結果、人工股関節置換の適応になるとの診断を受けました。他院でセカンドオピニオンを受けるなど色々と検討したうえで、主治医の下で人工股関節置換術を受けました。
初診日がかなり前であることから、手続きを当事務所にご依頼いただきました。
当事務所での対応
人工股関節置換術を施行した場合、術後が安定していれば障害厚生年金3級になることが多いです(術後も状態が悪ければ2級以上の等級になる場合もあります)。
この方の術後の状態は安定しており、おおよそ3級程度と思われました。
したがって、初診日が厚生年金保険の加入中であったことを証明することが最大のポイントとなります。
初診日が厚生年金保険の加入中でない場合は障害基礎年金のみの対象となりますが、障害基礎年金には3級がないため、状態が3級程度では障害年金は支給されないことになってしまうからです。
初診日は今から26年前のA病院でした。
初診日はかなり前ですが、経過観察のために年1回の受診を長く継続していて、A病院の最終受診日は10年ほど前です。それなりに大きな病院ですし、左右の回転臼蓋骨切り術もその病院で施行しているのでカルテは残っているかも… と期待しましたが、残念ながらカルテは廃棄された後でした。
そこで、A病院については「受診状況等証明書を添付できない申立書」を準備し、次の受診先であるB病院に「受診状況等証明書」を作成していただきました。
受診状況等証明書の「⑤発病から初診までの経過」の欄には、A病院での初診日もちゃんと明記していただきました。ただし、「前医からの紹介状はありますか」の欄は「無」でした。
実は、主治医の異動先について行った形での転院で、A病院でもB病院でも同じY先生が主治医だったため、紹介状は作成されなかったのです。
B病院作成の受診状況等証明書にA病院での初診日は明記されているものの、裏付ける資料(紹介状)がない状態では、A病院の初診証明に用いるのは少々弱い気がしました。
そこで、B病院としてのY医師作成の受診状況等証明書に、A病院でもY医師が診療していた事実を追記していただきました。
結果
障害厚生年金3級に認定されました。
コメント
初診日がかなり前の場合、初診の医療機関がすでに廃院していたり、カルテが廃棄されていたりなどの理由で、初診の医療機関から受診状況等証明書を入手できない場合があります。
その場合には、他の方法を駆使して初診日を証明することが必要になります。
その方法の一つに「第三者証明」というものがあります。これは、受診の事実を知っている第三者に知っている内容を申し立ててもらう(一筆書いてもらう)という方法です。
第三者証明は、原則は2名以上からの証明が必要です。さらに、その初診日が20歳以降の場合には、第三者証明だけでなくその他の参考資料も必要です。(初診日が20歳未満の場合には、2名以上の第三者証明のみで初診日が認められる場合があります。)
しかし、証明をする第三者が医療従事者(実際に診療を行った担当医師や、診療の場にいた看護師など)の場合には、1名だけの第三者証明で初診日を認めてもらえる場合があります。
この事例は、書類自体は2番目の医療機関からの受診状況等証明書ですが、医療従事者からの第三者証明と同じ意味を持つものでした。
※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。