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令和5年度(2023年度)年金額は増額改定 ただし物価上昇には追いつかず

令和5年度の年金額は前年度より増額

令和5年度の年金額が発表

障害年金の額は、老齢年金や遺族年金と同様に賃金変動率物価変動率などに応じて毎年見直しが行われます。

令和5年度の年金額は、令和4年度の額から2.2%の引き上げ(増額)となることが発表されました。

ただし、68歳以上(正しくは68歳に達する年度)の方は、令和4年度の額から1.9%の引き上げ(増額)です。

令和5年度の障害年金の月額

令和5年度の障害年金、および障害年金に関連して支給されるものの具体的な額は下のようになります。

注意
  • 年額を12で割った月額で表記しています。(端数は切り捨てていますので、月額を12倍した額と実際の年金額とは異なります。)
  • 68歳以上の場合は額が異なります。(改定率が異なるため。)
令和5年度(2023年度)の障害基礎年金の額
  • 障害基礎年金 2級 月額66,250円(1,434円の増額)
  • 障害基礎年金 1級 月額82,812円(1,792円の増額)
  • 68歳以上の場合は額が異なります。(68歳以上の場合の額はこちら
令和5年度(2023年度)の障害厚生年金の額
  • 障害厚生年金1級~3級 前年度より2.2%の増額(額は各人で異なる)
  • 障害厚生年金3級の最低保障額 月額49,691円(1,075円の増額)
  • 68歳以上の場合は額が異なります。(68歳以上の場合の額こちら
令和5年度(2023年度)の年金生活者支援給付金の額
  • 障害年金生活者支援給付金 2級 月額5,140円(120円の増額)
  • 障害年金生活者支援給付金 1級 月額6,425円(150円の増額)
令和5年度(2023年度)の加算の額
  • 子の加算(2人目まで1人につき) 月額19,058円(408円の増額)
  • 子の加算(3人目以降1人につき) 月額6,350円(134円の増額)
  • 配偶者加給年金(障害) 月額19,058円(408円の増額)

68歳以上(正しくは68歳に達する年度)の場合

令和5年度(2023年度)の障害基礎年金の額(68歳以上)
  • 障害基礎年金 2級 月額66,050円(1,234円の増額)
  • 障害基礎年金 1級 月額82,562円(1,542円の増額)
令和5年度(2023年度)の障害厚生年金の額(68歳以上)
  • 障害厚生年金1級~3級 前年度より1.9%の増額(額は各人で異なる)
  • 障害厚生年金3級の最低保障額 月額49,541円(925円の増額)

68歳以上の場合も、年金生活者支援給付金や加算の額については67歳以下の場合と同額です。

改定後の年金額は6月支給分から適用

なお、年金は2か月に1回、偶数月に前月までの2か月分が支給されるので、改定後の額に変更された額振込令和5年6月15日支給分から(4~5月分の年金から)となります。

なお、年金額は2.2%の増額ですが、物価上昇率はプラス2.5%です。したがって、年金額は増額されるけれど物価上昇には追いついておらず、実質は目減りしているとも言えます。

なぜ物価上昇と同じように年金額も増額されないのかというと、それはマクロ経済スライドによる調整が発動したためです。

年金額の改定方法は下で説明します。興味のある方はご覧ください。

年金額の改定方法

年金額の改定(スライド)のルール

年金額の改定は、下のようなルールで行います。(国民年金法 第27条)

(なお、有期認定の障害年金には数年おきに障害状態の確認(更新)がありますが、更新と既裁定とは別の意味です。年齢で判断してください。)

年金額の改定方法のルール
  • 67歳以下の方(新規裁定者)の年金額は「名目手取り賃金変動率」を参考に改定する【原則】
  • 68歳以上の方(既裁定者)の年金額は「物価変動率」を参考に改定する【原則】
  • ただし、名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回る場合は、既裁定者の年金額も「名目手取り賃金変動率」を参考に改定する【例外】
  • 新規裁定者、既裁定者のいずれについても、さらに「マクロ経済スライド」による調整を行う
  • マクロ経済スライドによる調整には名目下限措置を講じ、前年度の年金額を下回るような調整は行わない
  • 名目下限措置によって未調整となった部分は、翌年度以降に繰り越す(キャリーオーバー

名目手取り賃金変動率や物価変動率は年度によって様々です。組み合わせとしては、下の図のように6つのパターンに分けることができます。

名目手取り賃金変動率と物価変動率の組み合わせとして、6つのパターンに分けることができます。それぞれのパターンによって、どのようにして年金額を改定するかが異なります。
年金額の改定(スライド)のルール|厚生労働省作成資料を一部改変
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001040881.pdf

①~③の場合の年金額の改定ルールは【原則】どおりです。すなわち、新規裁定者は「名目手取り賃金変動率」を、既裁定者は「賃金変動率」を参考に年金額を改定します。

しかし、④~⑥の場合の年金額の改定ルールは【例外】になります。すなわち、新規裁定者も既裁定者も「名目手取り賃金変動率」を参考に年金額を改定します。

この【例外】については、年金制度の支え手である現役世代の負担能力に応じた給付にするという観点から導入された考え方です。

さて、このようにして年金額を改定したら終わりではありません。さらに、マクロ経済スライドによる調整を行って、最終的な改定率が決まります。

マクロ経済スライドによる調整とは

マクロ経済スライドとは、年金財政の悪化を防ぐために、賃金や物価の上昇ほどには年金額を上昇させないように改定率を調整し(言い換えれば、上昇率を抑制し)、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

賃金や物価が上昇する景気拡大期では、マクロ経済スライドによって年金額の改定率が抑制される。
景気拡大期における年金の改定方法(イメージ図)

調整率は、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するものです。この仕組みは、平成16年の年金制度改正で導入されました。

ちなみに、令和5年度のマクロ経済スライドによる調整率はマイナス0.3%でした。計算式は下のとおりです。

マクロ経済スライドによるスライド調整率 ▲0.3%
 =公的年金被保険者数の変動率(令和元~3年度の平均)0.0%
 +平均余命の伸び率(定率)▲0.3%

しかし、マクロ経済スライドによる調整には年金額の名目下限措置があり、必要以上には調整しない仕組みがあります。すなわち、調整によって前年度の年金額を下回ってしまいそうな場合には、マクロ経済スライドによる調整を一部分にとどめ(または一切調整せず)、前年度の年金額を下回るような調整は行いません。

マクロ経済スライドによる調整は前年度の年金額を下限とし、それ以上の調整は行われない。
年金額の名目下限措置(イメージ図)

ところが、景気がなかなか改善しないことから、マクロ経済スライドによる完全調整が進まない(未調整分が生じる)状況が続きました。

そこで、平成28年の年金制度改正において、調整しきれずに残った未調整分を翌年度以降に繰り越す仕組み(キャリーオーバー)が導入されました。

令和4年度の年金額の改定はどうだったか

令和4年度はマイナス0.4%の減額改定でした。

名目下限措置があるはずなのに、なぜ減額になったの?という疑問が生じるところです。

令和4年度は、物価変動率(▲0.2%)も名目手取り賃金変動率(▲0.4%)もマイナスだったため、マクロ経済スライドによる調整を行う前の段階ですでにマイナスだったのです。

年金額の名目下限措置は、マクロ経済スライドによる調整についての措置なので、その前の段階では発動しません。物価変動率や名目手取り賃金変動率がマイナスであれば、年金額はそのまま減額改定されます。そのため、令和4年度はマイナス0.4%の減額改定だったのです。

賃金や物価が低下する景気後退期には年金額はマイナス改定されるが、その場合にはマクロ経済スライドによる調整は行われない。
景気後退期における年金の改定方法(イメージ図)

そして、年金額の名目下限措置により、それ以上の減額はせず、マクロ経済スライドによる調整は行いませんでした。

このようにして、令和4年度はマクロ経済スライドによる調整を行わなかったので、その未調整分(▲0.3%)は翌年度以降に繰り越されました(キャリーオーバー)。

令和5年度の年金額の改定ではキャリーオーバー分も調整した

では、令和5年度はどうでしょうか。

令和5年度の年金額の改定に関する参考指標は以下のとおりでした。

  • 物価変動率 +2.5%
  • 名目手取り賃金変動率(※) +2.8%
  • マクロ経済スライドによるスライド調整率 ▲0.3%
  • 前年度までのマクロ経済スライドの未調整分 ▲0.3%

※ 名目手取り賃金変動率とは、「(2年度前から4年度前までの)3年度平均の実質賃金変動率」に「前年の物価変動率」と「3年度前の可処分所得割合変化率」を乗じたものです。

令和5年度は、「物価変動率」「名目手取り賃金変動率」がいずれもプラスで、かつ「名目手取り賃金変動率」が「物価変動率」を上回るケースです。上の方で紹介した、6つの組み合わせパターンを示した図では①のパターンに当たります。

つまり、令和5年度の年金額は、新規裁定者は「名目手取り賃金変動率の+2.8%」を参考に、既裁定者は「物価変動率の+2.5%」を参考に年金額を改定することになります。

しかし、年金額の改定にはそれぞれの変動率をそのまま用いるわけではありませんそれがマクロ経済スライドによる調整です。

賃金や物価が上昇する景気拡大期では、マクロ経済スライドによって年金額の改定率が抑制される。さらに、景気後退期に未調整となっていたキャリーオーバー分も合わせて調整される。
景気回復期の年金の改定方法(イメージ図)

新規裁定者の年金額は「名目手取り賃金変動率の+2.8%」を参考に改定します。

しかし、令和5年度のマクロ経済スライドによる調整が▲0.3%、前年度以前から繰り越された未調整分が▲0.3%あるため、マクロ経済スライドによる調整は合計で▲0.6%となり、最終的な年金額の改定率は 2.8-0.6=2.2% となりました。

このようにして、令和5年度の年金額は、令和4年度から2.2%の引き上げ(増額)との発表となったのです。

(また、既裁定者の年金額は「物価変動率の+2.5%」を参考に改定しますが、同様にマクロ経済スライドによる調整が▲0.6%ですので、最終的な年金額の改定率は2.5-0.6=1.9% となりました。)

参考リンク

令和5年度の年金額改定について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000191631_00017.html

国民年金法による改定率の改定等に関する政令(平成十七年政令第九十二号)|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417CO0000000092

国民年金法 第27条の2・第27条の3・第27条の4・第27条の5|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000141

厚生年金保険法 第43条の2・第43条の3・第43条の4・第43条の5|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115