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事例46【網膜委縮】障害基礎年金1級に認定された事例

眼の障害の事例

概要

傷病名両網膜委縮(弱視)
年代40代
経緯小1で弱視と診断。数年通院したものの効果なく受診中断。
成人し、柔道整復師として生計を営んでいた。
40代で心疾患にて入院した際に、病院スタッフに勧められて院内の眼科を受診。
障害者手帳の交付申請を行い手帳1級を取得。
決定年金障害基礎年金1級
年金額99万円

ご依頼までの経緯

生後1か月で先天性心疾患が見つかりましたが、手術は無事に成功。思い返してみれば当時から視力は悪かったそうですが、心疾患の方に気を取られていて周囲は気づかなかったようです。

小学校に入学してようやく視力が悪いことが判明。眼科を受診したところ弱視と診断され、定期的に通院して視力回復訓練を受けることになりました。10分間機械をのぞき込んで映像を見続けるという治療法で、子どもにとって10分間もじっとしていることはとても辛かったそうです。

数年間通ったものの効果はなく、医師からも「これ以上の回復は見込めない」と言われたことにショックを受け、それ以降眼科の通院はしませんでした。

視力が悪くても働けるように柔道整復師の資格を取得し、周囲に助けられながらずっと仕事を続けてきました。

40代で心不全を発症し病院に入院。その際に、目が不自由なのに身体障害者手帳を持っていないことを看護師に驚かれ、促されて院内の眼科を受診。矯正視力が右眼:0.01、左目:指数弁で、身体障害者手帳1級が交付されました。(同時に、心臓機能障害としての身体障害者手帳も交付されました。)

障害年金の案内も受け、ご家族が年金事務所と相談しながら心疾患および視力障害の両方についての請求準備を進めたものの行き詰まり、弊所にご相談いただきました。

当事務所での対応

ご相談があった時には、心疾患を理由とした傷病手当金を受給し始めて6か月が経過したところでした。

年金事務所からは、心疾患も視力障害も幼少期の受診から30年以上も空けての再受診なので、幼少期の初診日の証明が難しそうであれば、社会的治癒を主張して障害厚生年金を請求したらどうかとの案内を受けたとのことでした。

弊所にて、手帳申請時の診断書コピーを基に障害の程度を推測してみると、心疾患については3級程度、視力障害については1級程度と思われました。

◆ 心疾患・・・幼少期を初診日とすると障害基礎年金となり、程度から考えると不支給(障害基礎年金に3級はないため)。一方、再受診を初診日とすると1年6か月未経過なのでまだ請求できないが、将来的には障害厚生年金3級が支給される可能性はある。

◆ 視力障害・・・幼少期を初診日とすると障害基礎年金1級となり、現在受給中の傷病手当金とは調整なく両方を同時に受給できる(原因傷病が異なるし、そもそも障害基礎年金のみと傷病手当金とは調整規定がないため)。一方、再受診を初診日とすると1年6か月未経過なのでまだ請求できないが、将来的には障害厚生年金1級が支給される可能性はある。しかし、視力がよくない状態がずっと続いていたことから、社会的治癒を主張しても認められる可能性は低いかもしれない。

以上のことから

①視力障害について幼少期を初診日として障害基礎年金を請求
 ↓
②傷病手当金と障害基礎年金を同時に受給
 ↓
③傷病手当金の受給期間満了の頃に障害厚生年金についての可能性を検討開始(3級程度であれば請求するメリットないかも) 

という方針を立てました。

早速、視力障害についての準備を始めましたが、ここで問題になったのが、初診日の証明です。小学生の時に数年間通院して以来、眼科受診はせず、眼鏡屋で眼鏡を作り変えてきたそうです。眼科に行ったところで意味ないし…と思っていたそうです。

小学生当時の眼科は既に閉院。通知表や健康診断の記録などを探していただきましたが、小学生~高校生まですべて処分済。受診歴を知っている方に一筆書いていただくこと(「第三者証明」といいます。)を頼めるような知り合いもいない。

ご家族も交えて色々と考えた結果、小学校の卒業アルバムに眼鏡をかけた顔写真があったことから、これをコピーして「小学生が眼鏡をかけるにあたり、常識的に考えて必ず眼科を受診しているはず。」と主張して、その他には初診日に関する書類が何もない状態で請求することにしました。

本来だったら20歳時に遡及して請求したい気もしましたが、「あまり欲張らず、とにかく今後の年金支給が決まれば十分」とのご本人の意向もあり、事後重症による請求をしました。

結果

20歳前に初診日があったと認められ、障害基礎年金1級に認定されました。

コメント

初診日の証明には、通常は受診状況等証明書が必要です。

受診状況等証明書がない場合には、2名以上の方に第三者証明を書いていただいて証明する方法も認められています。あるいは、年金請求から5年以上前に作成されたカルテに受診歴に関する記載があった場合には、その記載によって認められるケースもあります。

これらがない場合には、障害者手帳申請時の診断書の写しや、民間の保険会社に提出した診断書の写しなど、とにかく受診歴が推測できるような「何か」を探して初診日を主張します。

今回は、小学校の卒業アルバムの顔写真によって、眼科受診を主張しました。

結果が返ってくるまでドキドキしていましたが、結果的には約1か月でのスピード決定でした。

諦めないことの大切さを教えていただきました。

※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。