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事例49【多発性硬化症】障害厚生年金2級に認定された事例

肢体の障害の事例

概要

傷病名多発性硬化症
年代40代
経緯20代にて多発性硬化症を発症するも約半年で寛解。
約15年後に再発。
徐々に症状は悪化。車いすを使用しながらフルタイム就労を継続。
決定年金障害厚生年金2級
年金額204万円(初回596万円)

ご依頼までの経緯

20代半ばに首に痛みが生じて整形外科を受診。神経内科を紹介され、検査の結果、多発性硬化症と診断されました。服薬によって症状は治まり、半年ほどで寛解となりました。通院はいったん終了となりました。

その後はフルタイム就労と育児に忙しい日々を送りました。なお、出産時には多発性硬化症の既往歴を伝えましたが、症状が出ていないことから問題なしとされました。

40代になってふらつきが出現。メニエール病を疑って耳鼻咽喉科を受診するも異常なく、神経内科にて多発性硬化症の再発と診断されました。症状は徐々に悪化して転倒することが多くなり、車いすを使用するようになりました。

職場で配慮を受けつつフルタイム就労を続けていたので障害年金には該当しないと思っていましたが、主治医の勧めで障害年金を検討することになりました。

しかし、初診日をどのように考えればよいか分からず、弊所にご相談いただきました。

当事務所での対応

病歴をお伺いしたところ、いったん寛解となってから約15年の無症状期間があることから、社会的治癒を主張し、再発時を初診日として準備を進めることにしました。

また、障害認定日(再発時の初診日から1年6か月後)の頃は歩行器や補助具を使用しており、すでに症状が進んでいたことから、障害認定日に遡及して障害年金を請求することにしました。(ご相談いただいた時点からは2年半前が障害認定日になります。)

障害認定日に遡及して障害年金を請求するには、通常、請求時点の診断書に加えて障害認定日(この日から3か月以内)の診断書も必要になります。

ところが、障害認定日の頃は、主治医の退職に伴ってA病院からB病院へと転院の準備をしていた最中でした。

A病院には障害認定日のあと2か月間は通院していたので、通常であればA病院に診断書を依頼することになります。しかし、この頃は経過観察のみで検査らしい検査をしていませんでした。診断書を依頼しても、空白の多い不十分な診断書になってしまうことが予想されました。

転院先のB病院には、障害認定日から3か月半たった頃から受診を開始していました。つまり、どう頑張っても通常必要とされている期間から半月ほど後ろにずれた日付での診断書になってしまいます。しかし、B病院では転院後の受け入れということもあり、各種検査をしていました。

日付は範囲内だが検査データが少ないA病院の診断書か…
日付は半月ほどずれてしまうが検査データが揃っているB病院の診断書か…

ご本人やご家族には、「診断書の日付がずれているから障害認定日については認定不可(却下)」または「A病院からの診断書も追加提出するよう指示が来る」などの可能性もあることをご説明した上で、診断書がしっかり作成されるであろうB病院にて診断書を依頼することとしました。また、「なぜA病院ではなくB病院による診断書を提出するのか」を説明する独自の申立書も作成して、年金請求書に添付しました。

また、社会的治癒が否定されないように、病歴・就労状況等申立書には症状がなかった15年間のことをしっかりと説明しました。

結果

寛解後の再発を初診日とし、障害認定日に遡及して障害厚生年金2級に認定されました。

コメント

この事例の場合、年金事務所に相談に行くと、いちばん最初の整形外科の受診を初診日として書類を揃えるよう説明があるかもしれません。

しかし、その請求方法では、初診日から1年6か月後には寛解して受診終了しており、障害認定日の診断書を用意することができず、障害認定日に遡及しての支給決定にはなりません。仮に診断書を用意できたとしても寛解しているので等級不該当となり、やはり障害認定日に遡及しての支給決定にはなりません。

再発時を初診日とし、多少時期がずれていても障害認定日時点の障害状態がよく分かる診断書を用意することで、2年半前の障害認定日に遡及して障害年金の支給を受けることができました。

請求方法の違いで600万円ちかくの差が出ました。

※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。