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障害年金はいくらもらえる?障害年金の額の計算方法と受給額の例

計算する女性

こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金に関する様々な情報をお伝えしています。

今回は、障害年金の金額に関するお話です。

障害年金の額の計算方法と、具体的な受給額の例をご紹介します。

障害年金の額は一律ではない

まず、障害年金の金額を「〇〇円です!」と簡単に言うことはできません。

というのも、障害年金にはさまざまな種類(2つの制度・4段階の等級・加算の有無)があり、種類よって金額も異なるからです。

金額を知るには、まずはどのような種類があるのかを把握した上で、自分の場合はどの種類に該当するのかを判断する必要があります。

障害年金の構成

最初に障害年金の構成の概要を確認しましょう。

障害年金は、制度(国民年金 or 厚生年金保険)、等級(1級・2級・3級・手当金)、扶養親族(配偶者・子)の有無によって下の図のような構成になっています。

障害年金の構成

国民年金と厚生年金保険

障害年金には、大きく分けて国民年金厚生年金保険という2つの制度があります。共済組合などもありますが、厚生年金保険とほぼ同じと考えて大丈夫です。

国民年金からは障害基礎年金が、厚生年金保険からは障害厚生年金が支給されます。

どちらの制度の障害年金が支給されるかは、初診日に加入していた制度によって決まります。

初診日の加入制度と障害年金の種類
  • 初診日に国民年金のみに加入 → 障害基礎年金
  • 初診日に厚生年金保険に加入 → 障害厚生年金 + 障害基礎年金(年齢や等級によっては障害厚生年金のみの場合もある)
  • 初診日に国民年金・厚生年金保険の被保険者ではないが「60歳~65歳の誕生日の前々日までの間」または「20歳の誕生日の前々日までの間」にある → 障害基礎年金

国民年金のみに加入している人とは、自営業の人や、親や配偶者に扶養されている人などが該当します。初診日に国民年金のみに加入していた人は、国民年金から障害基礎年金が支給されます。

厚生年金保険に加入している65歳未満の人は、国民年金にも同時加入している扱いとなります。したがって、初診日に厚生年金保険に加入していた人は、障害厚生年金だけでなく、同じ等級の障害基礎年金もあわせて支給されます。

ただし、障害基礎年金には3級がないので、3級の場合は障害厚生年金だけが支給されます。また、厚生年金保険に加入していても65歳を過ぎると国民年金からは抜けるので、2級であっても障害基礎年金は支給されず障害厚生年金だけが支給されます。

間違えやすいのは、以下のようなケースです。

間違えやすいケース
  • 配偶者が厚生年金保険の被保険者で、本人は被扶養者 → 本人は厚生年金保険に加入していないので、国民年金から障害基礎年金の対象になる(障害厚生年金の対象外)
  • 以前は厚生年金保険に加入していたが、厚生年金保険を抜けてから初めて受診した → 初診日に厚生年金保険に加入していないので、国民年金から障害基礎年金の対象になる(障害厚生年金の対象外)
  • 厚生年金保険に加入する前から受診を継続していて、その後、厚生年金保険に加入した → 初診日に厚生年金保険に加入していないので、国民年金から障害基礎年金の対象になる(障害厚生年金の対象外)
  • 厚生年金保険に加入しているときに受診していて、その後に厚生年金保険から抜けた → 初診日に厚生年金保険に加入していたので、厚生年金保険から障害厚生年金の対象になる

初診日の考え方は以下の記事で詳しく解説しています。

聴診器と書類 障害年金における初診日の正しい意味をご存じですか?

3段階の等級と一時金

障害年金にはいくつかの等級があります。

障害年金の等級
  • 障害基礎年金=1級~2級の2段階
  • 障害厚生年金=1級~3級の3段階(年金のほかに、障害手当金という一時金もある)

障害基礎年金は2段階のみです。3級や一時金はありません。

障害厚生年金は3段階です。ただし、そのほかに一時金もあるので、一時金も含めれば4段階ともいえます。

等級ごとの基本額

障害年金の等級が異なると、それぞれの基本額(加算をつける前の本体の額)が異なります。

各等級の基本額の関係式は以下のとおりです。この関係式は、障害基礎年金障害厚生年金とも共通です。(ただし、障害基礎年金に3級はありません。)

障害年金の基本額

1級の基本額】=【2級の基本額】×1.25倍

3級の基本額】=【2級の基本額】

障害手当金(一時金)】=【2級の基本額】×2倍

※ 3級、障害手当金には最低保障額があります。

障害基礎年金の基本額は誰でも同じ金額です。2級は約78万円、1級はその1.25倍の約97万円です。

障害厚生年金の基本額は、それぞれの人の報酬に比例した額で、各人によって異なります。報酬の考え方は後述します。

2級と3級の基本額は同じです。ただし、3級には加算がつきません。また、3級には同じ等級の基礎年金の同時支給がないことから最低保障の考え方があります。加算や最低保障については後述します。

なお、障害手当金は、年金ではなく一時金として支給されるものです。額は、2級の基本額の2倍です。2倍というと、障害手当金の方が2級よりも高額だと勘違いしがちですが、2級は年金なので翌年以降も支給が続きますが、障害手当金は一回支給を受けたらそれで終わりです。

加算の有無

障害年金には、それぞれの条件を満たしていると加算がつきます。

障害年金の加算

子どもを扶養しているとき → 障害基礎年金に加算がつく

配偶者を扶養しているとき → 障害厚生年金(1級,2級)に加算がつく

子どもとは「18歳到達年度末までにある子」または「障害等級1級または2級の障害状態にある20歳未満の子」を指します。

配偶者は内縁関係も含みます

3級の障害厚生年金には加算はありません。

なお、ここでの「扶養」は、正しくは「生計を維持している」と言います。所得税の計算における扶養控除の基準や、健康保険における被扶養者の基準とは異なります。割とゆるめに設定されており、「配偶者や子の年収が850万円未満」で「生計が同一」であれば生計を維持しているとみなされます。

障害基礎年金の額

理屈はいいから具体的な額を早く見たいという方は、以下のリンクからぞうぞ。

障害基礎年金の基本額

障害基礎年金の基本的な額は定額です。同じ等級であれば全員が同じ額になります。

障害基礎年金の額

障害基礎年金1級:年額780,900円(月65,075円)× 1.25倍 × 改定率

障害基礎年金2級:年額780,900円(月65,075円)× 改定率

障害基礎年金の基本的な額は「定額」と書きましたが、ずっと同じ額ではありません。物価の変動などを参考に算出された「改定率」という係数を掛けることで、毎年度、少しずつ額が改定されることになっています。

改定率は、0.996や1.004といった数字で、毎年3月中旬に翌年度(4月~翌年3月)に適用する数字が発表されます。

障害基礎年金への加算

障害基礎年金の受給者によって生計を維持されている「18歳到達年度末までにある子」または「障害等級1級または2級の障害状態にある20歳未満の子」がいる場合、人数に応じて子の加算が支給されます。

なお、配偶者を扶養していても障害基礎年金に加算はありません。(障害厚生年金の方には配偶者の加算があります。)

子の加算の額

子1人または2人:年額224,700円(月18,725円)× 改定率 × 人数

3人目以降の子:年額74,900円(月6,241円)× 改定率 × 3人目以降の人数

たとえば、子どもが3人の場合は、224,700×2+74,900 と計算します(実際には、改定率を掛けた数値を用います)。

なお、厳密には、ただ単に子どもがいるだけではなくて「生計を維持している」ことが必要です。

生計を同一にしている高校生までの子であれば、ほとんどが該当します(その子が850万円以上を稼いでいると該当しません)。

子どもが高校に通っておらず仕事をしていたり、高校生だが別居していて仕送りをしているなどの場合は、生計を維持していることの証明書類が必要な場合があります。

障害基礎年金の額のまとめ

令和5年度の改定率は 1.018(67歳以下の場合) です。よって、令和5年度の額は以下のようになります。

    令和5年度の額(年額)
障害基礎年金 1級 993,750円
2級 795,000円
子の加算 1人目・2人目 228,700円×人数
3人目以降 76,200円×人数

障害厚生年金の額

理屈はいいから具体的な額を早く見たいという方は、以下のリンクからぞうぞ。

障害厚生年金の基本額

障害厚生年金の基本額は、厚生年金保険に加入中の収入の平均額(正確には平均標準報酬月額・平均標準報酬額)や加入期間の長さを基に額をします。これを報酬比例の額といいます。

なお、加入期間については全期間ではなく、障害認定日(原則は初診日から1年6か月を経過した日のことを指します)までの期間で計算します。障害認定日以降の加入期間については、障害厚生年金の基本額には反映されないことに注意しましょう。

ただし、それでは加入期間が短すぎて基本額が少額すぎる場合もあるので、加入期間(障害認定日までの被保険者期間)が300月以下の場合は300月(25年)とみなして計算する特例があります。

報酬比例の額の計算方法は後述しますが、自分で計算するのはかなり大変です。

報酬比例の見込額は年金事務所で確認すると教えてもらえます。

あるいは、日本年金機構から毎年送られてくる「ねんきん定期便」に記載されている老齢厚生年金の額(※)を参考にすると大体の目安をつけることができます。老齢厚生年金も報酬比例の額が支給されるので、障害厚生年金も似たような金額になります。

※ 老齢基礎年金を含まない、老齢厚生年金だけの額です。

注意

老齢厚生年金の額は、障害認定日以降の加入実績も含んで計算されていること、加入期間を300月とみなす特例がないことなど、障害厚生年金の額とは計算方法が異なります。したがって、あくまでも目安であることにご注意ください。

社労士 小川

報酬比例の額(年額)を超ざっくりと把握するならば、障害認定日(初診日から1年6か月後の日)までの期間についての「平均月収×1.5」くらいです。あくまでも超ざっくりですよ。

参考までに、報酬比例の額の計算方法を載せておきます。計算方法を読み飛ばしたい方は こちら へどうぞ。

報酬比例の額
  • 平成15年3月31日までの被保険者期間について
    平均標準報酬月額 × 7.125 / 1000 × 被保険者期間の月数
  • 平成15年4月1日以降の被保険者期間について
    平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 被保険者期間の月数

この2つを合計した額を報酬比例の額とする

平均標準報酬(月)額とは
(標準報酬月額・標準報酬額・標準賞与額)×再評価率の合計/被保険者期間の月数

平均標準報酬額(平均標準報酬月額)とは、該当期間の給与の平均額のことです。

厳密には、給与ではなく、標準報酬月額というある程度の幅をもたせたキリのよい額を用います。例えば、給与額が107,000円~114,000円の間にある場合の標準報酬月額は110,000円と決め、一度決めたら原則として1年間は同じ標準報酬月額を用いて計算します。

平成15年4月を境に計算式が異なるのは、以前は賞与からは保険料を徴収していませんでしたが、平成15年4月からは賞与からも保険料を徴収することになり、その代わりに賞与額も含めて平均額を計算することになったからです。(名称も以前の分は平均標準報酬額ですが平成15年4月からの分は平均標準報酬額になっています。)

そして、物価の変動などを参考にして算出された再評価率を掛けて、額を調整します。

被保険者期間の月数とは

加入月から障害認定日の属する月までの月数

※ 被保険者期間が300月に満たない場合は、300月になるよう補正する

この報酬比例の額をもとにして、障害厚生年金の額が決まります。

障害厚生年金の額

障害厚生年金1級:報酬比例の額× 1.25倍

障害厚生年金2級:報酬比例の額

障害厚生年金3級:報酬比例の額(最低保障あり)

障害厚生年金1級・2級は同じ等級の障害基礎年金が同時に支給されますが、障害厚生年金3級は障害基礎年金の併給がありません。そこで、障害厚生年金3級は、額が低くなりすぎないよう障害基礎年金の4分の3相当額が最低保障されます。

障害厚生年金への加算

障害厚生年金1級・2級の受給権者によって生計を維持されている配偶者がいる場合、配偶者の加給年金が加算されます。

また、障害厚生年金には、いずれの等級においても子を扶養していることに対する加算はありません。子を扶養していることに対する加算は、障害基礎年金の方で対応することになっています。

すなわち、障害厚生年金3級には、配偶者や子を扶養していても加算はされないことに注意しましょう。

配偶者の加給年金の額

年額224,700円(月18,725円)× 改定率

生計を維持している」ことの要件は、所得税の計算における扶養控除の基準や、健康保険における被扶養者の基準とは異なります。割とゆるめに設定されており、「配偶者の年収が850万円未満」で「生計が同一」であれば生計を維持しているとみなされます。

注意

配偶者自身が障害基礎年金や障害厚生年金(3級を含む)を受給している場合は、生計を維持されているとみなされなくなり、配偶者の加給年金は加算されません。

障害手当金の額

障害手当金は、報酬比例の額の2倍です。障害厚生年金2級の年金額の2年分のイメージです。ただし、年金ではなく一時金としての支給ですので、最初に1回支給を受けたら、それで終わりです。

障害手当金の額

障害手当金:報酬比例の額 × 2倍(最低保障あり)

障害厚生年金3級に最低保障があったように、障害手当金にも障害基礎年金の2年分の4分の3相当額が最低保障されます。

障害厚生年金の額のまとめ

令和5年度の改定率は 1.018(67歳以下の場合) です。障害厚生年金と障害手当金をまとめると以下のようになります。

    令和5年度の額(年額)
障害厚生年金 1級 報酬比例の額×1.25
2級 報酬比例の額
3級 報酬比例の額(最低保障 596,300円)
障害手当金(一時金) 報酬比例の額×2(最低保障 1,192,600円)
配偶者の加給年金(1級・2級のみ) 228,700円

障害年金生活者支援給付金

障害年金生活者支援給付金は、障害年金とは全く別の制度によるものですが、一応触れておきます。

これは、令和元年10月に消費税が8%から10%に引き上げられたことから、低所得高齢者および障害者等の生活を支援する目的で導入されたものです。

支給要件に該当していれば、年金と同じタイミングで年金と同じ口座に振り込まれることになっています。

給付金の支給要件
障害基礎年金1級・2級の受給者について、受給者本人の前年の年金以外の所得が「4,621,000円+扶養親族の人数×380,000円」以下であること

令和5年度の額は、障害基礎年金1級の場合は月額6,425円、障害基礎年金2級の場合は月額5,140円です。(給付金も年金と同様に、1級は2級の1.25倍になっています。)

障害年金の合計額

障害基礎年金と障害厚生年金をまとめて、令和5年度の具体的な額を入れると下のようになります。

障害年金の構成 令和5年度の額

例えば、【厚生年金保険の被保険者の間に初診日がある傷病により障害等級1級となった夫】【妻】【17歳の子】【15歳の子】の4人家族の場合で考えるとどうなるでしょうか。仮に報酬比例の額が40万円とすると、

障害基礎年金:993,750 + 228,700×2 = 1,451,150

障害厚生年金:400,000×1.25 + 228,700 = 728,700

合計:2,179,850円

※ これに加えて、障害年金生活者支援給付金 6,425円×12か月=77,100円も支給されます。

障害年金の受給額の例

障害基礎年金の受給額の例

令和5年度における、家族構成ごとの具体的な額は以下のとおりです。

  本人のみ・夫婦 夫婦と子1人 夫婦と子2人
1級 年 993,750円
(月 82,812円)
年 1,222,450円
(月 101,870円)
年 1,451,150円
(月 120,929円)
2級 年 795,000円
(月 66,250円)
年 1,023,700円
(月 85,308円)
年 1,252,400円
(月 104,366円)

障害厚生年金の受給額の例

2019年度に厚生労働省が行った調査結果資料を参考にまとめた受給額の一例です。報酬比例の額や加入期間が人によって様々なので金額に幅がありますが、ここでは平均的な例を掲載しています。

なお、障害厚生年金1級・2級は、原則として同じ等級の障害基礎年金も併給されるので、下表はその合計額になっています。

  本人のみ 夫婦 夫婦と子1人
1級 年 120~192万円
(月 10~16万円)
年 142~214万円
(月 12~18万円)
年 165~237万円
(月 14~20万円)
2級 年 96~144万円
(月 8~12万円)
年 118~166万円
(月 10~14万円)
年 141~189万円
(月 12~16万円)
3級 年 59~72万円
(月 5~6万円)

※ 参考:厚生労働省「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年」第1表 性別・制度別・障害等級別・年齢月階級別・年金額階級別 受給者数/受給者割合

関連リンク

障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構(外部リンク)

障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構(外部リンク)

年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年|政府統計の総合窓口(外部リンク)