こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。
このサイトでは、障害年金に関するさまざまな情報を分かりやすくお伝えしています。
今回は「上肢の障害」の認定基準の内容をご紹介します。
認定基準はどこに書かれているか
障害年金の「障害の程度」は、法と通知で定められた基準に基づいて認定されます。
具体的には、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に加え、厚生労働省が示す「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という通知により詳しい判断の目安が記されています。
このページでは、障害認定基準の中から「上肢の障害」に関する内容を取り上げて解説します。
上肢の障害は3つの区分がある
上肢の障害は、以下の3つに区分されており、区分ごとに認定基準等が定められています。
- 機能障害
- 欠損障害
- 変形障害
認定基準
機能障害(上肢の関節等)
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 両上肢の機能に著しい障害を有するもの (両上肢の用を全く廃したもの) |
2級 | 両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの |
一上肢の機能に著しい障害を有するもの (一上肢の用を全く廃したもの) | |
3級 | 両上肢に機能障害を残すもの |
一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの | |
一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの | |
障害手当金 | 一上肢に機能障害を残すもの |
一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの | |
前腕の他動可動域が、健側の他動可動域の4分の1以下に制限されたもの |
「上肢の用を全く廃したもの(全廃)」とは
「上肢の用を全く廃したもの」とは、3大関節中2関節以上の関節が、次のいずれかに該当する程度のものをいいます。
- 不良肢位で強直しているもの
- 関節の他動可動域が、健側(または「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域)の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
- 筋力が著減又は消失しているもの
「上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」とは
「上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、例えば、3大関節中1関節の他動可動域が健側(または「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域)の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているものや、3大関節中1関節が不良肢位で強直しているものなどをいいます。
「上肢に機能障害を残すもの」とは
「上肢に機能障害を残すもの」とは、例えば、3大関節中1関節の筋力が半減しているものなどをいいます。
「関節の用を廃したもの(用廃)」とは
「関節の用を廃したもの」とは、例えば、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、または常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節などをいいます。
「関節に著しい機能障害を残すもの」とは
「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、例えば、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの、または常時ではないが固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼などをいいます。
「関節に機能障害を残すもの」とは
「関節に機能障害を残すもの」とは、例えば、関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの、または固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼などをいいます。
※ 併合等認定基準(併合判定参考表の12号)で登場します。
機能障害(手指)
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの (両上肢のすべての指の用を全く廃したもの) |
2級 | 両上肢の親指及び人差し指または中指の機能に著しい障害を残すもの (両上肢の親指及び人差し指または中指の用を全く廃したもの) |
一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの (一上肢のすべての指の用を全く廃したもの) | |
3級 | 親指及び人差し指を併せ、一上肢の4指の用を廃したもの |
障害手当金 | 一上肢の3指以上の用を廃したもの |
人差し指を併せ、上肢の2指の用を廃したもの | |
一上肢の親指の用を廃したもの |
「上肢の指の用を全く廃したもの(全廃)」とは
「上肢の用を全く廃したもの」とは、次のような状態によって、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものをいいます。
- 指の著しい変形
- 麻痺による高度の脱力
- 関節の不良肢位強直
- 瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮
「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」とは
「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」とは、、両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいいます。
「指の用を廃したもの」とは
「指の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
- 指の指の末節骨の長さの2分の1以上を欠くもの
- 中手指節関節(MP)又は近位指節間関節(PIP)(おや指にあっては指節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの
欠損障害
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 両上肢のすべての指を欠くもの |
2級 | 両上肢のおや指を欠き、それに加えてひとさし指または中指を欠くもの |
一上肢のすべての指を欠くもの | |
3級 | 一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの |
一上肢のおや指またはひとさし指を併せ、一上肢の3指以上を失ったもの | |
障害手当金 | 一上肢の2指以上を失ったもの |
一上肢のひとさし指を失ったもの |
- 「上肢の指を欠くもの」とは、基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいいます。
- 「指を失ったもの」とは、おや指については指節間関節(IP)、その他の指については近位指節間関節(PIP) 以上で欠くものをいいます。
- 欠損障害の場合の障害の程度を認定する日は、切断または離断をした日です。(なお、初診日から1年6ヶ月以降に切断・離断した場合は、原則どおり1年6か月経過日が障害認定日です。)
- 障害手当金の対象となる症状固定日は創面が治癒した日です。

変形障害
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
3級 | 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの |
障害手当金 | 長管状骨に著しい転位変形を残すもの |
運動機能に著しい障害はないが、上腕骨、橈骨又は尺骨に偽関節を残すもの (一上肢に偽関節を残すもの) |
「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは
「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限ります。)
- 上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
- 橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは
「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
- 上腕骨に変形を残すもの
- 橈骨または尺骨に変形を残すもの
ただし、変形とは外部から観察できる程度(15 度以上わん曲して不正癒合したもの)以上のものをいいます。長管状骨の骨折部が良方向に短縮なく癒着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱いません。
認定における留意点
日常生活における動作について
- 両上肢に障害がある場合の認定に当たっては、一上肢に障害がある場合と比較して、日常生活における動作に制限が加わることから、日常生活における動作を考慮して総合的に認定することとされています。
- 日常生活における動作は、おおむね次のとおりです。
- さじで食事をする
- 顔を洗う(顔に手のひらをつける)。
- 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
- 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
- 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
- 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンを留める)
- 日常生活における動作の状態は、杖や補助具などを使用しない状態で評価することになっています。
人工骨頭または人工関節を挿入置換した場合
- 人工骨頭または人工関節を挿入置換した場合の障害の程度を認定する日は、人工骨頭または人工関節を挿入置換した日です。(なお、初診日から1年6ヶ月以降に挿入置換した場合は、原則どおり1年6か月経過日が障害認定日です。)
- 一上肢の3大関節中、1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したものや、両上肢の3大関節中、1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したものは、3級と認定されます。
- ただし、挿入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定されます。
▼肘関節の人工関節そう入置換の取扱い|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/01.pdf

関節の運動について
- 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とされます。各関節の主要な運動は次のとおりです。
- 肩関節・・・屈曲・外転
- 肘関節・・・屈曲・伸展
- 手関節・・・背屈・掌屈
- 前腕・・・・回内・回外
- 手指・・・・屈曲・伸展
- 関節可動域の評価は、健側の関節可動域と比較して、患側の障害の程度が評価されます。ただし、両側に障害を有する場合は、「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域が参考とされます。
- 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮したうえで評価されます。
- 筋力
- 巧緻性
- 速さ
- 耐久性
- 他動可動域による評価が適切でないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺になっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から上肢を総合的に認定することとされています。
対象となる疾病例
上肢の障害の対象となる疾患には以下のようなものがあります。
上肢の切断、脊髄損傷、外傷性運動障害、頭部外傷後遺症、脳腫瘍、脊髄小脳変性症、パーキンソン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、関節リウマチなど
障害認定基準(原文)
障害認定基準のうち、「上肢の障害」の認定基準(原文)は下のリンクから見ることができます。
▼第3 第1章 第7節 第1 上肢の障害|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-7-1.pdf
参考リンク
▼肢体の障害用の診断書を提出するとき|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-18.html
▼診断書(肢体の障害用)|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-18.files/03-1.pdf