こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。
このサイトでは、障害年金に関するさまざまな情報を分かりやすくお伝えしています。
今回は「悪性新生物による障害」の認定基準の内容をご紹介します。
認定基準はどこに書かれているか
障害年金の「障害の程度」は、法と通知で定められた基準に基づいて認定されます。
具体的には、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に加え、厚生労働省が示す「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という通知により詳しい判断の目安が記されています。
このページでは、障害認定基準の中から「悪性新生物による障害」に関する内容を取り上げて解説します。
認定基準
悪性新生物の障害の程度は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものとされています。
「認定基準」を表にまとめると以下のとおりです。
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
悪性新生物による障害の区分
悪性新生物による障害は、以下の3つに大別されています。
- 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む)によって生じる、局所の障害
- 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む)による、全身の衰弱又は機能の障害
- 悪性新生物に対する治療の効果として起こる、全身の衰弱又は機能の障害
①の「局所の障害」は、ここで示される基準ではなく、障害があらわれている部位や症状に応じてそれぞれの基準によって認定されます。
したがって、②や③の「全身の衰弱又は機能の障害」がここで示される基準によって認定されます。
障害等級の例
各障害等級に相当すると認められるものを一部例示すると、下表のとおりです。
下表はあくまでも例示です。必ずしも下表に該当していなければ認定されないというわけではなく、基本的には「認定基準」に掲げられている障害の状態を考慮されます。
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | 衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | 著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
障害の状態の指標
一般状態区分表
一般状態区分表は総合評価時の参考とされますが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されます。したがって、目安とは異なる認定結果となることもあり得ることに留意します。
区分 | 一般状態 | 障害等級 の目安 |
---|---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの | おおむね非該当 |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例えば、軽い家事、事務など) | おおむね 3級相当~非該当 |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの | おおむね 2~3級相当 |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの | おおむね 2級相当 |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの | おおむね 1級相当 |
検査成績
検査には、一般検査の他に、組織診断検査、腫瘍マーカー検査、超音波検査、X線CT検査、MRI検査、血管造影検査、内視鏡検査等があります。
認定における留意点
- 悪性新生物は、全身のほとんどの臓器に発生するため、現れる病状は様々であり、それによる障害も様々です。悪性新生物そのものによるか、又は悪性新生物に対する治療の結果として起こる障害の程度は、障害があらわれている部位や症状に応じて、それぞれに該当する基準により認定されます。
例えば、治療として肢体を切断した場合は「肢体の障害」の基準により認定され、治療の副作用として全身衰弱が認められる場合は本節の基準により認定されます。 - 全身衰弱と機能障害とを区別して考えることは、悪性新生物という疾患の本質から本来不自然なことが多く、認定に当たっては組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像診断等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されます。
- 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか、又は転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものとされます。相当因果関係の意味については、以下の記事の中で解説しています。

対象となる疾病
悪性新生物による障害の対象となる疾病は以下のとおりです。
すべての悪性腫瘍
障害認定基準(原文)
障害認定基準のうち、「悪性新生物による障害」の認定基準(原文)は下のリンクから見ることができます。
▼第3 第1章 第16節 悪性新生物による障害|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-16.pdf
参考リンク
▼血液・造血器・その他の障害用の診断書を提出するとき|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-16.html
▼診断書(血液・造血器・その他の障害用の診断書)|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-16.files/08-1.pdf