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腎疾患による障害年金の認定基準

腎疾患による障害

こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。
このサイトでは、障害年金に関するさまざまな情報を分かりやすくお伝えしています。

今回は「腎疾患による障害」の認定基準の内容をご紹介します。

認定基準はどこに書かれているか

障害年金の「障害の程度」は、法と通知で定められた基準に基づいて認定されます。

具体的には、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に加え、厚生労働省が示す「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という通知により詳しい判断の目安が記されています。

このページでは、障害認定基準の中から「腎疾患による障害」に関する内容を取り上げて解説します。

腎疾患による障害とは

腎疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性腎不全に対する認定です。

慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいいます。

すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性があります。

腎疾患で最も多いものは、糖尿病性腎症慢性腎炎ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症ですが、他にも、多発性嚢胞腎急速進行性腎炎腎盂腎炎、膠原病、アミロイドーシス等があります。

認定基準

腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものとされています。

「認定基準」を表にまとめると以下のとおりです。

障害の程度障害の状態
1級長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

障害等級の例

各障害等級に相当すると認められるものを一部例示すると、下表のとおりです。

下表はあくまでも例示です。必ずしも下表に該当していなければ認定されないというわけではなく、基本的には「認定基準」に掲げられている障害の状態を考慮されます。

障害の程度障害の状態
1級慢性腎不全の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のに該当するもの
2級慢性腎不全の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
人工透析療法施行中のもの
3級慢性腎不全の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
ネフローゼ症候群の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

障害の状態の指標

慢性腎不全の検査所見

区分検査項目単位軽度異常中等度異常高度異常
内因性クレアチニン
クリアランス
ml/分20以上 30未満10以上 20未満10未満
血清クレアチニンmg/dl3以上 5未満5以上 8未満8以上

(注)eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位は ml/分/1.73㎡)が10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能とする。

ネフローゼ症候群の検査所見

区分検査項目単位異常
尿蛋白量
(1日尿蛋白量又は尿蛋白
/尿クレアチニン比)
g/日
又は
g/gCr
3.5以上を持続する
血清アルブミン(BCG法)g/dl3.0以下
血清総蛋白g/dl6.0以下

一般状態区分

一般状態区分表は総合評価時の参考とされますが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されます。したがって、目安とは異なる認定結果となることもあり得ることに留意します

区分一般状態障害等級
の目安
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるものおおむね非該当
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例えば、軽い家事、事務など)おおむね
3級相当~非該当
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているものおおむね
2~3級相当
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったものおおむね
2級相当
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものおおむね
1級相当

臨床所見

主要症状には、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状と、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見があります。

検査成績

検査には、尿検査、血球算定検査、血液生化学検査(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質等)、動脈血ガス分析、腎生検等があります。

認定における留意点

人工透析療法にかかる取り扱い

  • 人工透析療法施行中の場合、2級と認定されます。
  • 主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。
  • 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して 1 年 6 月を超える場合を除く)となります。
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腎臓移植にかかる取り扱い

  • 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定されます。
  • 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して、術後1年間は従前の等級とされます。

その他の注意点

  • 検査成績は、その性質上変動しやすいので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとされます。
  • 腎疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見もまた様々なので、検査成績によるほか、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定されます。
  • 糸球体腎炎ネフローゼ症候群を含む)、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎に罹患し、その後、慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められます。相当因果関係の意味については、下の記事の中で解説しています。
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対象となる疾病例

腎疾患による障害の対象となる疾病には以下のようなものがあります。

慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、多発性嚢胞腎、急速進行性腎炎、腎盂腎炎、膠原病、アミロイドーシスなど

障害認定基準(原文)

障害認定基準のうち、「腎疾患による障害」の認定基準(原文)は下のリンクから見ることができます。

▼第3 第1章 第12節 腎疾患による障害|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-12.pdf

参考リンク

▼腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用の診断書を提出するとき|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20150416.html

▼診断書(腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用の診断書)|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20150416.files/07-1.pdf

▼障害年金の初診日に関する調査票【腎臓・膀胱の病気用】|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/2018042602.files/9.pdf