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精神の障害年金の認定基準

精神の障害

こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。
このサイトでは、障害年金に関するさまざまな情報を分かりやすくお伝えしています。

今回は「精神の障害」の認定基準の内容をご紹介します。

認定基準はどこに書かれているか

障害年金の「障害の程度」は、法と通知で定められた基準に基づいて認定されます。

具体的には、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に加え、厚生労働省が示す「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という通知により詳しい判断の目安が記されています。

このページでは、障害認定基準の中から「精神の障害」に関する内容を取り上げて解説します。

認定基準

精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとされています。

また、精神の障害は多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様であるため、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮するものとされています。

「認定基準」を表にまとめると以下のとおりです。

障害の程度障害の状態
1級精神の障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級精神の障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
障害手当金精神に、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

精神の障害は6つの区分がある

精神の障害は、以下の6つに大別されています。認定基準を基本としつつ、区分ごとに障害等級の例が示されています。

  1. 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
  2. 気分(感情)障害
  3. 症状性を含む器質性精神障害
  4. てんかん
  5. 知的障害
  6. 発達障害

なお、「症状性を含む器質性精神障害」「てんかん」であって妄想・幻覚等のあるものについては、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害、並びに気分(感情)障害」に準じて取り扱うとされています。

統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害

障害等級の例

障害の程度障害の状態
1級高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、 日常生活が著しい制限を受けるもの
3級残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

認定における留意点

  • 統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多いが、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもあるため、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮することとされています。
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるものとされています。
  • 現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで、日常生活能力を判断することとされています。
  • 認定の対象となる他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

気分(感情)障害

障害等級の例

障害の程度障害の状態
1級高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

認定における留意点

  • 気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものなので、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮することとされています。
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるものとされています。
  • 現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで、日常生活能力を判断することとされています。
  • 認定の対象となる他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

症状性を含む器質性精神障害

症状性を含む器質性精神障害とは

ここでの症状性を含む器質性精神障害高次脳機能障害を含む。)とは以下のものを指します。

  • 先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害
  • 膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障
  • アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害

障害等級の例

障害の程度障害の状態
1級高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金認知障害のため、労働が制限を受けるもの

認定における留意点

全般的な留意点

  • 脳の器質障害については、「精神障害」と「神経障害」を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して全体像から総合的に判断して認定するとされています。
  • 認定の対象となる「他の精神疾患」が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるものとされています。
  • 現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで、日常生活能力を判断することとされています。

高次脳機能障害

  • 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となります。その障害の主な症状としては、失語失行失認のほか記憶障害注意障害遂行機能障害社会的行動障害などがあります。
  • 高次脳機能障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから、療養及び症状の経過を十分考慮することとされています。
  • 失語の障害については、「音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定されます。
音声・言語機能の障害 音声・言語機能の障害年金の認定基準

精神作用物質使用による精神障害

  • 精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものなので、精神病性障害を示さない急性中毒、及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象となりません
  • アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害については、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮することとされています。
  • 違法薬剤の使用によって「障害」または「その原因となった事故」を生じさせた者の障害については、原則として給付制限の対象となります。この場合、障害年金の全部または一部が支給されません
  • 上記の給付制限について、過去に違法薬剤の使用歴がある場合であっても、対象障害や対象障害の原因となった事故と違法薬剤の使用との間に直接の起因性が医学的に認められないときや、故意の犯罪行為又は重大な過失による障害ではないと確認された場合は、給付制限の対象になりません。詳細は以下の通知をご参照ください。

てんかん

障害等級の例

下表はあくまでも例示であり、必ずしも下表に該当していなければ認定されないというわけではないことに留意します。

障害の程度障害の状態
1級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの
2級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、CまたはDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくはCまたはDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

認定における留意点

  • てんかん発作は、部分発作全般発作未分類てんかん発作などに分類されますが、具体的に出現する臨床症状は多彩であり、発作頻度も、薬物療法によって完全に消失するものから、難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないものまで様々であることに留意します。
  • てんかんの認定に当たっては、その発作の重症度(意識障害の有無生命の危険性社会生活での危険性の有無など)や発作頻度に加え、発作間欠期の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定します。
  • 様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。
  • 精神神経症状及び認知障害については、「症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定することとされています。
  • 抗てんかん薬の服用や外科的治療によって、てんかん発作が抑制される場合は、原則として認定の対象になりません
  • 認定の対象となる他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

知的障害

障害等級の例

障害の程度障害の状態
1級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助が必要とするもの
2級知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

認定における留意点

  • 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じ、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものを指すとされています。
  • 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断することとされています。
  • 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事しています。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断することとされています。
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるものとされています。
  • 認定の対象となる他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

発達障害

障害等級の例

障害の程度障害の程度
1級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

認定における留意点

  • 発達障害とは、自閉症アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害学習障害注意欠如・多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものを指すとされています。
  • 発達障害については、たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により、対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行うこととされています。
  • 発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が 20 歳以降であった場合は、その受診日を初診日とします。
  • 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事しています。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断することとされています。
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるものとされています。
  • 認定の対象となる他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

人格障害、神経症の取り扱い

  • 人格障害は、原則として認定の対象となりません
  • 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象となりません。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱かわれます。なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し、判断することとされています。
うずくまる女性 人格障害・神経症で障害年金を申請するときに気をつけることとは

等級判定ガイドライン

精神の障害には、上で述べた認定基準や認定要領のほかに、等級判定を適正に行うために作成された「等級判定ガイドライン」があります。

詳細は以下の記事で解説しています。

つくし 精神の障害年金で外せない等級判定ガイドラインとは リビング 精神の障害年金における日常生活能力の判定とは マグカップの置かれたテーブル 精神の障害年金における日常生活能力の程度とは 掌の上にハート 精神の障害年金における等級判定はどのような基準で判定されるのか

対象となる疾病例

精神の障害の対象となる疾病には以下のようなものがあります。

うつ病、躁うつ病(双極性感情障害)、統合失調症、統合失調感情障害、てんかん、知的障害、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)、認知症など

障害認定基準(原文)

障害認定基準のうち、「精神の障害」の認定基準(原文)は下のリンクから見ることができます。

▼第3 第1章 第8節 精神による障害|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-8.pdf

参考リンク

▼精神の障害用の診断書を提出するとき|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.html

▼診断書(精神の障害用)|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.files/04-1.pdf

▼『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html