こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。
今回は、障害年金の更新に関するお話です。障害年金は定期的に更新の手続きを行う必要があります。手続きを期限までに行わないと支給が止まってしまうこともあるので、忘れずにしっかりと手続きを行う必要があります。
障害年金は多くの場合で更新の手続きが必要
障害年金を受給するには、診断書や受診状況等証明書を取得したり、病歴・就労状況等申立書を作成したり、他にも通帳や手帳のコピー、状況によっては戸籍謄本を取り寄せなど、様々な書類を用意する必要があります。
やっとの思いで書類を揃えて提出し、待つこと数か月、無事に障害年金の受給が決定すると、本当にホッとしますね。
しかし、残念ながら、年金証書が届けばこれでもう安心、この先ずっと障害年金をもらい続けることができる…とはならないことがほとんどです。
審査の結果「永久認定」となった場合は、文字どおり「永久」なので、ずっと障害年金を受給することができます。
しかし、多くの場合は1年から5年の「有期認定」となり、定期的に更新手続きを行う必要があります。
更新は障害状態確認届を提出するだけでよい
では、障害年金の更新とはどのような手続きが必要でしょうか。
また色々な書類を用意しなければならないのか…とガッカリしなくても大丈夫です。原則は「障害状態確認届」だけを提出すればよいことになっています。他の書類は不要です。
「障害状態確認届」の内容は、初回の裁定請求時に提出した「診断書」と大体同じ内容です。
この「障害状態確認届(診断書)」を医師に作成してもらい、決められた期限(提出期限)までに提出することになります。
障害状態確認届は自宅に送られてくる
更新時に提出する障害状態確認届の入方法ですが、これは、提出期限の約3か月前に自宅に届くことになっています。例えば、10月が提出年月の場合は、その約3か月前の7月末ごろに届くことになります。
したがって、通常は自宅に障害状態確認届が届くことで更新時期が間近であることが分かるので、「気が付かないうちに更新期限を過ぎていた・・・!」ということにはなりません。
なお、初回の裁定請求のときの診断書と大体同じ内容なのですが、障害状態確認届には自分の情報も印字されています。したがって、日本年金機構のホームページからダウンロードできる診断書をそのまま障害状態確認届に流用することはできません。障害状態確認届を紛失してしまった場合は、日本年金機構に連絡して再発行してもらいましょう。
更新の時期はどこに書いてあるか
更新は、指定された年月の末日までに障害状態確認届を提出します。では、提出期限はどこに記載されているのでしょうか。
初めての更新の提出時期は、年金証書の右下の方に「次回診断書提出年月」が記載されています。
2回目以降の更新は、前回の更新時に「次回診断書提出年月のお知らせ」や「支給額変更通知書」が届きますが、これらの書類に「次回診断書提出年月」が記載されています。
提出年月のうち「月」の部分は、受給者本人の誕生月になっています。例えば4月生まれの人は「令和○年4月」、10月生まれの人は「令和○年10月」という具合です。
提出年月のうち「年」の部分は、人によってそれぞれです。1年後~5年後のうちのいずれか、または永久認定(更新は不要)となります。
永久認定の場合には、次回診断書提出年月が「****」と表示されています。
更新の間隔はどのようにして決定されるのか
更新期間はできれば長い方が安心ですね。では、更新期間はどのようにして決定されるのでしょうか。
更新期間は、「障害年金及び障害福祉年金受給権者等に係る障害状態の再認定について」(昭和45年11月28日庁保険発第38号)という通知を参考に、障害認定医の医学的判断に基づいて決定されます。
※ この通知は令和2年10月に改正され、令和2年12月1日より改正後の新しい内容が適用されています。
この通知によれば、更新期間は次のように考えることとなっています。
- まずは、障害の状態が永久固定に該当すると認められるかどうかを判断する
- 該当すると認められない場合には、更新期間を5年と設定するかどうかを判断する
- 上記のいずれにも該当しない場合は、3年又は2年を目安となる基準年数とした上で、受給権者等の症状の変化や審査が必要となる頻度を勘案して、更新期間を設定する
- 受給権者等の症状や年齢等から、短期間のうちに状態が改善する可能性が高いと判断される場合は、更新期間を1年とすることも視野に入れて検討を行う
- 複数回の再認定を通じて障害等級の変更がない場合や、前回判定時と障害等級の変更がなく、かつ、前回同様の更新期間が経過した時点では障害等級が変更されない蓋然性が高いものと判断される場合は、従前よりも長い更新期間の設定を検討する
- 障害の状態が永久固定に該当すると認められるに至った場合は、永久固定と認定して、以後の障害の状態についての再認定は原則として要しない
- 再認定時に障害等級が変更された場合や、障害等級は維持されたものの状態の改善傾向が把握された場合は、新規認定時と同様の方法で更新期間の判断を行う
次のような場合は5年を目安として更新期間を設定する
- 受給権者等の症状の変化が想定されにくい場合
- 政令別表に該当する障害の状態が5年程度は継続される蓋然性が高いと判断される場合
参考までに、更新期間を5年と設定することが妥当と考えられる症例は概ね以下のとおり
① 視力障害関係
ア 前眼部障害(角膜乾燥症、パンヌス、角膜片雲、角膜白斑、虹彩後癒着症)
イ 中間透光体障害(白内障(手術効果があまり期待できないもの))
ウ 眼底障害(高度近視、緑内障)
② 聴力障害関係
ア 伝音難聴(耳硬化症、偽耳硬化症、外耳道閉鎖症、中耳炎後遺症、慢性中耳炎)
イ 混合難聴(慢性中耳炎(非穿孔性を含む。))
③ 肢体不自由関係
ア 関節運動範囲の障害(関節リウマチ、結核性関節炎、化膿性関節炎、強直性脊椎炎による関節強直、瘢痕拘縮、骨髄炎、変形性関節症、骨折後遺症による関節運動制限)
イ 変形又は骨支持性の障害(長管骨仮関節、変形治癒骨折)
④ 内部障害関係
ア 常時排菌のある広汎空洞型肺結核あるいは代償不能性心不全等症状が極めて重篤で回復の見込みの非常に少ないもの
イ 人工透析療法施行中のもの
⑤ 精神障害関係
ア 精神障害
- 重症の状態にあり、かつ、その状態が2~3年程度続いている統合失調症
- 毎年病相期が発現している双極性感情障害(そううつ病)
- 前記統合失調症及び双極性感情障害(そううつ病)に準ずる程度の非定型精神病
- 難治性の真性てんかん及び症候性てんかん
- 症状性を含む器質性精神障害で、指導・訓練によって日常生活能力の回復が期待できるもの
イ 知的障害(指導・訓練によって日常生活能力の著しい向上が期待できるもの)
更新の手続きをしないと年金は差し止められることも
障害状態確認届(診断書)が届いたら、医師に診断書を作成していただき、提出期限(誕生月の月末)までに到着するように提出します。
障害状態確認届の提出が遅れたり記載内容に不備がある場合は、年金の支払いが一時止まる(差し止め)ことがあります。
もし差し止めとなった場合には、さかのぼって診断書を提出することで、消滅時効にかかっていない分をさかのぼって受給できる場合があります。
なお、「差し止め」と「支給停止」では意味が異なります。
更新手続きに不備があった場合に行われる「差し止め」は、各月の障害年金の支給を受ける権利(支分権)はあるかもしれないが、手続きが完了していないので支給が出来ないだけ、という考え方です。したがって、手続きを行うことで支分権があることが確認できれば、時効で消滅していない部分に関してはさかのぼって支給を受けることができます。
一方の「支給停止」は、障害の状態が改善した等の理由により、障害年金の支給が一時停止になることを指します。この場合、おおもとの障害年金の支給を受ける権利は残っていますが、障害の状態が改善している間は支給をストップするというもので、「差し止め」と違って、支給停止と判断された期間は支給を受けることはできません。
更新で等級が変わった場合はいつの分から反映するか
更新の結果、前回と同じ等級で決定する場合もあれば、上位の等級に変わることも下位の等級に変わる(または支給停止になる)こともあります。
では、等級が変更になった場合は、いつの分から額が反映するでしょうか。
等級が上がったときは、指定月(誕生月)の翌月分から額が変更となります。
例えば、誕生月が9月の場合、10月分(12月15日支給分)から額が変更となります。
等級が下がったり支給停止となったりなど、不利益な変更の場合は、指定月(誕生月)の4か月目の分から額が変更(または支給停止)となります。
例えば、誕生月が8月の場合、12月分(2月15日支給分)から額が変更になります。