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事例14【線維筋痛症】障害厚生年金2級に認定された事例

難病の事例

概要

傷病名線維筋痛症
年代30代
経緯足を怪我したことをきっかけに体の不調が生じるように。
その後、数か月の間に痛みの範囲、頻度、強さが増していった。
4か所目の医療機関で線維筋痛症と確定診断された。
認定日現在でステージⅢ。
決定年金障害厚生年金2級
年金額140万円

ご依頼までの経緯

ある日、左足に物を落として指先を負傷。医療機関を受診し、このケガ自体は半月程度で治ったものの、これをきっかけに下痢、股関節痛、左脇腹の痛みなど、何となく体に不調が生じるようになっていきました。

負傷から約3か月後のある日、背中の左側に激痛が走りました。仕事を休んで受診したものの原因は不明。その後も痛みは治まるどころが徐々に身体全体に広がっていき、他院でも検査をしましたが原因は分からず。

ネットで調べて線維筋痛症のことを知り、自分に当てはまることが多かったことから専門医の予約を取って受診したところ、ようやく線維筋痛症と確定診断を受けました。

仕事には復帰できる状態になく退職し、自宅療養を続けましたが、まるで剣山の上に寝ているような日々でした。

左足のケガから約1年半が経ち、障害年金の可能性についてご主人から当事務所に相談をくださいました。

当事務所での対応

当初、ご主人からお電話でお話を伺った様子だと、日常生活がかなり大変そうです。まずは主治医にステージ(線維筋痛症の重症度分類試案によるステージ)を確認するようお伝えしました。また、初診日を確定させるために受診歴を思い出していただきました。

後日、主治医からステージⅢと言われたとのご連絡がありました。障害の状態としては、最低でも3級、お話の感じでは2級にも当てはまりそうです。

受診歴を伺うと、きっかけは左足の負傷のようですが、この時の受診は線維筋痛症についての受診とは言い切れない感じがしました。この受診を除いて考えると、激痛が走って受診した医療機関が初診になりそうです。

そこで、主治医に初診日についてのご意見を伺うことにしました。

すると、主治医から「自分が診療していない時のことは分からないから、ウチに来る前の症状が線維筋痛症の症状だったかどうかは明言できないよ。」と言われてしまいました。そして、主治医に作成していただく診断書の中の初診日欄③も「当院の初診日を記載する。他の医療機関の受診日は記載できない。」と言われてしまいました。推測はできても、診断書へ記載するほどの確たる証拠はない、ということのようです。

「激痛が走って受診した日」=2019年9月4日
「現在の主治医の初診日」=2019年10月31日
(※ 日付はアレンジしています。)

2019年9月4日を初診日と認められれば、障害認定日は2021年3月4日となり、支給決定すれば4月分から支給開始です。

一方で、2019年9月4日を初診日と認められず、2019年10月31日を初診日と認定されると、障害認定日は2021年4月30日となり、支給決定すれば5月分から支給開始です。

初診日の認定のされ方によって、年金の支給開始が1か月ずれることになります。たかが1か月、されど1か月。できれば1ヶ月でも早く(多く)支給された方が助かりますし、この事例ではそちらの方が正しいと感じます。

左足の負傷時の受診は除外するにしても、激痛が走っての受診を線維筋痛症の初診日としていただけるよう、せめて「本人の申立て」として記載できないかお願いしましたが、残念ながらそれも受けていただけませんでした。

ご本人やご主人と相談し、診断書への記載は諦め、病歴・就労状況等申立書などによって激痛で受診した日が初診日であると主張して請求するにしました。

どちらに認定されても良いように、診断書の現症日は2021年5月でお願いしました。5月中ならば、どちらの認定日からも3か月以内に収まります。

5月に計測などを行い、出来上がった診断書を見てみると… ⑱欄の日常生活における動作の障害の程度が、自己申告による判断よりも全体的に軽めになっています。例えば、△☓としていたものが〇△という具合です。

これはさすがに困りました。主治医に訂正の検討をお願いしましたが、一度作成した診断書については明らかな記入ミス以外は訂正しない、とキッパリと断られてしまいました。

今後もこの医療機関には通院を継続しますので、ご本人と主治医との関係性も大切です。ご本人とも相談し、これ以上のお願いを主治医にすることは控え、その代わりに病歴・就労状況等申立書で日常生活の不自由さを主張することにしました。

そして残念なことに、受診状況等証明書にも少々問題がありました。

大筋の内容は大丈夫だったのですが、経過の概要欄に「〇〇ペインクリニックへ紹介した」との記載があります。正しくは「〇〇地域の痛みを専門とする医療機関」です。偶然にも「〇〇ペインクリニック」という病院が実在してしまうため、この内容だと、〇〇ペインクリニックへの紹介を受けながら違う医療機関に受診したことになり、病歴・就労状況等申立書の内容とも合いません。

せめて「〇〇【の】ペインクリニック」などと追記していただけないか聞いてみましたが、カルテに「〇〇ペインクリニック」と書かれているので直せないとのことでした。

ここは大きな問題にはならないだろうと考え、このままで提出することにしました。

結果

激痛で受診した日を初診日として、障害認定日による障害厚生年金2級が認められました。

コメント

難病の場合、最初は原因不明で診断名がつかず、医療機関を転々とする例が珍しくありません。

この場合に問題になるのが「初診日はいつだったのか」ということです。

確定診断を行った医療機関にこれまでの受診の経過をお話しして初診日を判断していただき、診断書にその旨を記載していただけると、その日を初診日として扱ってもらえる可能性が高くなります。

もちろん、初診の医療機関からの受診状況等証明書など、そのほかの資料の内容も合わせて総合的に判断されるので、診断書の記載だけでは足りません。認定機関に「この日を初診日として認定することが最も妥当だ」と認定してもらえるような客観的資料を多く積み上げる必要があります。

この事例は、発症からそれほど年月が経っていませんので、受診歴はそれほど複雑ではありませんでした。診断書には本人申し立てとは別の初診日が記載されましたが、本人が申し立てる初診の医療機関からの受診状況等証明書の内容や、そこから確定診断に至るまでの流れを病歴・就労状況等申立書でしっかりと説明することによって、正しく認定してもらうことができました。

※ 事例の内容は、趣旨が変わらない程度にアレンジしています。

参考資料

化学物質過敏症、線維筋痛症、脳脊髄液漏出症、慢性疲労症候群の診断書の記載例や認定事例等https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/2021040101.html

線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6137&dataType=1&pageNo=1