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障害年金における障害認定日の考え方と特例を知っておこう

虫眼鏡で確認する医師

こんにちは。障害年金の手続きを支援している社会保険労務士の小川早苗です。
このサイトでは、障害年金に関するさまざまな情報を分かりやすくお伝えしています。

今回は「障害認定日」を取り上げて解説します。

障害認定日とは

障害認定日とは、障害年金において障害の程度の認定を行うべき日のことを指します。

障害年金の支給を受けるには「一定程度の障害状態であること」が要件の一つになっています。しかし、病気やケガをしてすぐの状態で障害の程度をみるわけではありません。一定の期間、治療を受けるなどし、それでも残っている障害の状態で認定を行うことになります。

障害年金は、障害認定日より前に請求することはできません。障害認定日に達してからようやく請求することができます。

では、障害認定日はいつを指すのでしょうか。

障害認定日は、原則は「初診日から起算して1年6か月を経過した日」をいいますが、いくつか例外もあります。

障害認定日とは
  • 初診日から起算して1年6か月を経過した日(原則)
  • 初診日から起算して1年6か月以内にその傷病が治った場合は「治った日
  • 20歳前の年金制度に未加入の時期に初診日があり、かつ初診日から起算して1年6か月を経過した日が20歳前の場合は、20歳に達した日(20歳の誕生日の前日

以下で、それぞれの内容を詳しく解説します。

障害認定日(原則)

原則の障害認定日は、初診日から起算して1年6か月を経過した日です。

(例)
初診日:令和2年2月10日
障害認定日(原則):令和3年8月10日

なお、障害認定日起算日である「初診日」の考え方については、以下の記事をご覧ください。起算日がずれると障害認定日もずれるので、まずは初診日を正しく判断する必要があります。

聴診器と書類 障害年金における初診日の正しい意味をご存じですか?

治った日が障害認定日になることも

障害認定日には例外があります。

初診日から起算して1年6か月以内にその傷病が治った場合は、その治った日を障害認定日とすることになっています。

なお、障害年金における「治った」には、一般的に考えるような「元どおりに戻った」という概念だけではなく、その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含むこととされています。

もう少し正確に表現すると、障害年金における「治った」場合とは以下のように定義されています。

障害年金における「治った」場合とは
  • 器質的欠損もしくは変形または機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき
  • 症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待しえない状態に至った場合

原則の障害認定日は、初診日から起算して1年6か月を経過した日ですが、この原則の日よりも前に治った場合には、原則の障害認定日よりも障害認定日が早まることになります。

障害年金は、障害認定日にならないと請求できません。障害認定日が早まれば、その分だけ障害年金を早く請求することができます。

ただし、傷病が治った(症状が固定した)かどうかの判断は、非常に厳格に判断されています。したがって、治ったものとして障害年金を請求しても、診査の結果、まだ治っていないとして請求が却下されることもあります。この場合には、原則の障害認定日まで待ってから改めて障害年金を請求することになります。

障害認定日よりも後に治った場合

それでは、初診日から1年6か月を過ぎてから治った場合はどうなるでしょうか。

この場合は、治った日まで障害認定日を後ろへ遅らせることはせず、原則どおり初診日から起算して1年6か月を経過した日が障害認定日となります。

(例1)
初診日:令和2年2月10日
治った日:令和3年3月20日

初診日から1年6か月:令和3年8月10日

⇒障害認定日:令和3年3月20日(例外)

(例2)
初診日:令和2年2月10日

初診日から1年6か月:令和3年8月10日
治った日:令和5年3月20日

⇒障害認定日:令和3年8月10日(原則どおり)

障害認定日の特例とは

傷病が治ったかどうかは個別に判断されるのが原則ですが、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に定められた各障害の認定要領には、障害認定日があらかじめ示されているケースもあります。このような場合には、認定要領に従って障害認定日が認定されます。

これらの原則とは異なる障害認定日のことを「障害認定日の特例」と呼ぶことがあります。

代表的な「障害認定日の特例」について、以下にまとめました。(障害等級の目安も一緒に示されていることがほとんどなので、合わせて障害等級の目安も提示します。)

治った状態障害認定日等級の目安
咽頭全摘出咽頭全摘出した日2級
人工骨頭または人工関節を挿入置換挿入置換した日上肢3大関節または下肢3大関節に挿入置換した場合、3級(原則)
肢体の切断または離断切断または離断した日
(障害手当金は創面が治癒した日)
1肢の切断で2級
2肢の切断で1級
一下肢のショパール関節以上の欠損で2級
一下肢のリスフラン関節以上の欠損で3級
脳血管疾患による機能障害初診日から6か月経過した日以後
(注1)
個別に判断
在宅酸素療法在宅酸素療法を開始した日(常時使用の場合)3級
(24時間使用の場合)

心臓ペースメーカー
植え込み型除細動器(ICD)
人工弁
装着した日3級
心臓移植
人工心臓
補助人工心臓
移植した日または装着した日1級
(術後の経過で等級の見直しあり)
CRT(心臓再同期医療機器)
CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)
装着した日重症心不全の場合2級
(術後の経過で等級の見直しあり)
胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により人工血管(ステントグラフトを含む)を挿入置換挿入置換した日3級
(一般状態区分がイまたはウの場合)
人工透析療法透析を受け始めてから3か月を経過した2級
人工肛門の造設
尿路変更術
造設または手術をした日から起算して6か月を経過した日左記のいずれかで3級
(注2)
新膀胱を造設造設した日3級
(注2)
遷延性植物状態その状態に至った日から起算して3か月を経過した日以降に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるとき1級
(注3)
神経系統の障害初診日から6か月経過した日以後
(注4)
個別に判断

(注1)脳血管疾患による機能障害
初診日から6か月を経過した日以後に、医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるときに認定されるものであって、6か月目に必ず症状が固定したとみなされるわけではないことに注意します。

(注2)人工肛門の造設新膀胱の造設
人工肛門を造設し、かつ他にも該当する場合は、以下の日が障害認定日になります。

  • 人工肛門を造設し、かつ新膀胱を造設した場合:人工肛門を造設した日から起算して6か月を経過した日または新膀胱を造設した日のいずれか遅い日(初診日から起算して1年6か月を超える場合を除く)
  • 人工肛門を造設し、かつ尿路変更術を施した場合:それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6か月を経過した日(初診日から起算して1年か6月を超える場合を除く)
  • 人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害状態にある場合:人工肛門を造設した日または完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6か月を経過した日(初診日から起算して1年6か月を超える場合を除く)

(注3)遷延性植物状態
遷延性植物状態は、次の1.~6.に該当し、かつ、3か月以上継続しほぼ固定している状態において診断されます。なお、3か月の起算日は、遷延性植物状態の診断日ではなく、下記の6項目に該当した日です(遷延性植物状態の診断が確定してから3か月を経過した日ではないことに注意します)。

  1. 自力で移動できない
  2. 自力で食物を摂取できない
  3. 糞尿失禁をみる
  4. 目で物を負うが認識できない
  5. 簡単な命令には応ずることもあるが、それ以上の意思疎通ができない
  6. 声は出るが意味のある発語ではない

(注4)気管切開下での人工呼吸器など
現在の医学では、根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6か月経過した日以後において、気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるときに認定されます。

初診日が20歳前にある場合

年金制度に加入する前(20歳前など)に初診日があり、かつ初診日から起算して1年6か月を経過した日も20歳前の場合は、障害の程度を認定する日が原則とは異なります。

この場合は、障害の程度を認定する日は、20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)になります。

例えば、平成15年1月23日生まれで初診日が令和2年3月10日の場合は、原則の障害認定日(令和3年9月10日)はまだ20歳前(18歳)です。したがって、20歳に達する日(令和5年1月22日)が障害の程度を認定する日になります。

ただし、同じく20歳前に初診日があっても、初診日から起算して1年6か月を経過した日が20歳を過ぎているのならば、原則どおり初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日になります。

例えば、平成15年1月23日生まれで初診日が令和4年3月10日の場合は、原則どおり初診日から1年6か月を経過した日の令和5年9月10日が障害認定日です。20歳に達する日(令和5年1月22日)はまだ初診日から1年6か月を経過した日に至っていないので、障害認定日にはなりません。

20歳前に初診日がある場合の障害認定日の例

すなわち、20歳前に初診日がある場合は、早くても20歳に達するまでは待つ必要があるけれど、必ずしも20歳に達した日になるとは限らず、それ以降になる場合もあります。

20歳前に厚生年金保険に加入している場合は、原則どおりに認定されます。この場合には、20歳前が障害認定日になることもあります。

障害認定日を事例で確認しよう

障害認定日の考え方について、以下の事例で確認しましょう。

障害認定日の事例①

傷病名:慢性閉塞性肺疾患
初診日:平成29年1月15日
原則の障害認定日:平成30年7月15日
在宅酸素療法の開始:令和2年3月20日

⇒ 障害認定日:平成30年7月15日(初診日から1年6か月を経過した日)

※ 在宅酸素療法の開始(症状が固定した日)が「初診日から1年6か月を経過した日」よりも後のため、障害認定日は原則どおり。

障害認定日の事例②

傷病名:大動脈弁閉鎖不全症
初診日:平成29年1月15日
人工弁の装着:平成29年3月20日
原則の障害認定日:平成30年7月15日

⇒ 障害認定日:平成29年3月20日(人工弁を装着した日)

※ 「初診日から1年6か月を経過した日」よりも前に治った(症状固定)と認定される。

障害認定日の事例③

病名:自閉症スペクトラム
出生日:平成15年1月23日
初診日:令和2年3月10日(17歳)
20歳の誕生日:令和5年1月23日

⇒ 障害認定日:令和5年1月22日(20歳の誕生日の前日)

※ 「初診日から1年6か月を経過した日(令和3年9月10日)」は20歳に達していないため、障害認定日にはならない。

障害認定日には障害状態にないときは

ここまで、障害認定日の考え方について解説しました。

障害認定日とは「障害の程度を認定する日」であり、この日に一定程度の障害状態にあるかどうかを診査して、要件に該当すれば障害年金が支給決定となります。

それでは、障害認定日に一定程度の障害状態にない場合は、どうなるのでしょうか。この場合には、一定程度の障害状態に該当した日に改めて請求を行います。

これを「事後重症による請求」といい、この場合は「請求日」の障害の状態を診査することになります。

障害年金の請求_遡及請求って?事後重症とは? 遡及請求・事後重症|障害年金の請求の種類を分かりやすく解説

リンク

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html