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障害年金の初診日はどこまでさかのぼるべき?相当因果関係の考え方について

診断書

こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。

今回は、糖尿病などの生活習慣病で長い間闘病していた人が障害年金を申請するときに、どこまで初診日をさかのぼるべきなのかというお話です。

原因となった傷病の初診日までさかのぼるのが原則

障害年金を申請するときには、初診日を証明する書類(受診状況等証明書)を用意する必要があります。

では、初診日とはいつなのでしょうか。初診日の詳しい意味は下の記事で解説していますが、初診日の原則は「障害の原因となった傷病について初めて医師等の診療を受けた日」です。

聴診器と書類 障害年金における初診日の正しい意味をご存じですか?

ここで注目してほしいのが「障害の原因となった傷病」という文言です。

例えば、糖尿病の持病のある人が長い間服薬によって血糖コントロールをしていたけれど、徐々に視力が低下して糖尿病性網膜症を発症した場合を考えてみましょう。この人が視力障害について障害年金を申請するとき、初診日はいつになるでしょうか。見えにくさを感じて初めて眼科を受診した日でしょうか。

この方の「視力障害の原因となった傷病」は「糖尿病」です。障害の原因となった傷病として、「糖尿病性網膜症の初診」ではなく「糖尿病の初診」までさかのぼる必要があります。したがって、この場合の初診日は「糖尿病について初めて医師等の診療を受けた日」ということになります。

このように、どこまでさかのぼる必要があるのかを判断するときに大切なのが相当因果関係」という考え方です

 

障害の原因は相当因果関係の有無で判断

障害年金における相当因果関係とは、「前の疾病やケガがなかったら、後の疾病は起こらなかったであろう」と認められる関係のことを指します。

すなわち、障害年金の初診日を判断するときに【前の疾病やケガ】と【後の疾病】には相当因果関係があるかどうかに着目します。

相当因果関係があるとされた場合、【後の疾病】の初診日は、【後の疾病】について初めて受診をした日ではなく【前の疾病やケガ】について初めて受診した日が初診日になります。この場合、相当因果関係があるとされた【前の疾病やケガ】の初診日までさかのぼって証明する必要が生じます。

 

相当因果関係がある場合の初診日

 

後がケガの場合は相当因果関係なし

なお、障害年金における相当因果関係は、【前が疾病・ケガ】で【後が疾病】の場合のみとされています。【後がケガ】の場合は相当因果関係はないものと扱われます。

例えば、視力障害が原因で転倒してケガをした場合、【前の視覚障害】と【後のケガによる障害】は相当因果関係はなく、別々の障害として扱われます。

 

相当因果関係ありの例

相当因果関係は、上で紹介した糖尿病と糖尿病性網膜症だけでなく様々なケースがあります。

相当因果関係ありとして取り扱われることが多いものとして、以下のケースが例示されています。

  • 糖尿病と、糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性壊疸(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症)
  • 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)・多発性のう胞腎・慢性腎炎に罹患し、その後、慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱う
  • 肝炎と肝硬変
  • 結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合
  • 手術等による輸血により肝炎を併発した場合
  • ステロイド投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場合
  • 事故または脳血管疾患による精神障害がある場合
  • 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱う
  • 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係ありとして取り扱う

 

相当因果関係なしの例

相当因果関係なしとして取り扱われることが多いものとして、以下のケースが例示されています。

  • 高血圧と、脳出血または脳梗塞
  • 糖尿病と、脳内出血または脳梗塞
  • 近視と、黄斑部変性、網膜剥離または視神経萎縮

高血圧と脳出血または脳梗塞は、医学的には相当因果が関係があっても、障害年金における障害認定基準においては相当因果関係なしとされています。

 

相当因果関係の例示がない傷病の初診日は個別に判断

上で例示されているもの以外については、疾患の特質や症状、経過などにより個別に判断することになっています。

自分では相当因果関係があるかどうか判断に迷うときもあります。そのような場合は、障害年金を申請しようとしている傷病と既往症との間に相当因果関係があるかどうか、主治医に確認してみるとよいでしょう。

※ ただし、主治医の見解と、障害年金を審査する認定医などの見解が異なることもあります。

 

関連情報

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構(外部リンク)
※1ページ目(第1 一般的事項)に相当因果関係の解説が掲載されています