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障害年金と児童扶養手当は一緒に受給できる?

母と子

こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。

今回は、児童扶養手当と障害年金のお話です。

障害基礎年金の受給者が子を扶養しているとき、障害基礎年金には子の加算がつきます。さらに児童扶養手当の支給要件にも該当している場合、子の加算がある障害基礎年金と児童扶養手当は同時に受給できるのでしょうか。

児童扶養手当とは

児童扶養手当とは、ひとり親家庭などに支給される手当です。

次のいずれかに該当する児童(※)を【監護している母】【監護し生計を同じくする父】【父母に代わってその児童を養育している人】に支給されます。

※ 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童、または一定程度の重度の障害を有する20歳未満までの児童

児童扶養手当の児童の要件
  1. 父母が婚姻を解消した児童
  2. 父または母が死亡した児童
  3. 父または母が重度の障害の状態にある児童
  4. 父または母の生死が明らかでない児童
  5. 父または母から引き続き1年以上遺棄されている児童
  6. 父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
  7. 父または母が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童
  8. 母が婚姻によらないで懐胎した児童
  9. 父・母ともに不明である児童(孤児など)

①~②、④~⑧は主にひとり親家庭を、⑨は両親ともに不明で父母以外(祖父母など)が児童を育てている家庭を指します。③は、父母のどちらかに重度の障害がある家庭のことを指し、両親が揃っている家庭も含みます。

父母の要件である重度の障害とは

児童扶養手当が支給される児童の要件として「③ 父または母が重度の障害の状態にある児童」という要件があります。ここでいう重度の障害とは、具体的には以下のような状態を指します。

障害年金における障害認定基準と比較すると障害基礎年金の1級と同等の基準になっています。身体障害者手帳の基準と比較すると、身体障害者手帳の2級と同等の基準です。

  • 両目の視力の和が0.04以下のもの
  • 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
  • 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
  • 両上肢のすべての指を欠くもの
  • 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
  • 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
  • 両下肢を足関節以上で欠くもの
  • 体幹の機能に座っていることができない程度または立ち上がることができない程度の障害を有するもの
  • 上記のほか、身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、常時の介護を必要とする程度の障害を有するもの
  • 精神に、労働することを不能ならしめ、かつ、常時の監視または介護を必要とする程度の障害を有するもの
  • 傷病がなおらないで、身体の機能または精神に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の監視または介護とを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの

児童扶養手当が支給されない場合

以下の場合は児童扶養手当は支給されません。

児童扶養手当が支給されない場合
  • 児童・支給対象者(父・母・養育者)が日本国内に住所を有しないとき
  • 児童が、児童福祉法に規定する里親に委託されているとき
  • 児童が、児童福祉施設等(通所施設等を除く)に入所しているとき
  • 児童が、父または母の配偶者と生計を同じくしているとき(配偶者に重度の障害がある場合を除く)
  • 支給対象者(父・母・養育者)または扶養義務者に一定額以上の所得があるとき

所得制限の額については後述します。

その他にも、支給期間の上限等があります。詳しくはお住いの市町村で確認しましょう。

児童扶養手当の額

児童扶養手当の月額は以下のとおりです。支給対象者(父・母・養育者)や扶養義務者の所得によって、全部支給の場合と一部支給の場合があります。(令和2年4月~)

全部支給 一部支給
児童1人 43,160円 10,180〜43,150円
児童2人目の加算額 10,190円 5,100〜10,180円
児童3人目以降の加算額 6,110円 3,060〜6,100円

なお、児童扶養手当の額は児童扶養手当法に基づいて計算されているため、全国で同一の金額です。

所得制限の額とは

児童扶養手当における所得の計算方法

児童扶養手当は、【前年中の所得金額】に【養育費の8割相当額】を合算した額から【控除額】を差し引いた後の金額が、下に示す所得制限限度額未満の場合に支給されます。

すなわち、【所得】+【養育費の8割】-【控除額】所得制限限度額とを比較して、全部支給になるか一部支給になるか支給停止になるかが決まります。

  • 所得…給与所得者は「源泉徴収票の【給与所得控除額の金額】」、確定申告提出者は「確定申告書の【所得金額】」
  • 養育費…児童の父または母から、前年中に申請者(母または父)および対象児童が受け取った金品など
  • 控除額…以下の該当する額(地方税法による控除を受けた場合に限る)
控除の種類 控除額
一律控除 80,000円
勤労学生控除 270,000円
寡婦・寡夫控除(申請者が父または母の場合を除く) 270,000円
特別寡婦控除(申請者が母の場合を除く) 350,000円
障害者控除 1人につき270,000円
特別障害者控除 1人に付き400,000円
雑損・医療費・小規模企業共済等掛金・配偶者特別控除 控除相当額

所得制限限度額

扶養親族等の数 受給者本人(孤児等の養育者を除く) 扶養義務者・
配偶者・
孤児等の養育者
全部支給
所得制限限度額
一部支給
所得制限限度額
所得制限限度額
0人 490,000円 1,920,000円 2,360,000円
1人 870,000円 2,300,000円 2,740,000円
2人 1,250,000円 2,680,000円 3,120,000円
3人 1,630,000円 3,060,000円 3,500,000円
4人 2,010,000円 3,440,000円 3,880,000円
5人 2,390,000円 3,820,000円 4,260,000円
  • 受給者本人は、老人控除対象配偶者・老人扶養親族1人につき10万円、特定扶養親族等1人につき15万円を限度額所得に加算
  • 扶養義務者は、老人扶養親族(扶養親族と同数の場合は1人を除き)1人につき6万円を限度額所得に加算

控除額や扶養親族の数は地方税法による申告によります。年末調整や確定申告時には、扶養や控除の申告を必ず行いましょう。

児童扶養手当の手続き

児童扶養手当の申請手続き先はお住いの市町村になります。手続きに必要なものは市町村によって異なりますが、おおむね次のようなものが必要であることが多いようです。

  • 申請者と児童それぞれの戸籍謄本の原本
  • 申請者名義の預金通帳
  • 印鑑(認印)
  • 申請者と児童それぞれのマイナンバー確認書類
  • 申請者の本人確認書類

このほか、毎年8月に「現況届」、支給対象児童の数に増減があったときの「額改定減額届 額改定増額請求書」などが必要です。

障害基礎年金の受給者の児童扶養手当はどうなるか

児童扶養手当の支給対象者が障害基礎年金も受給できる場合、両方を満額受給することはできません障害基礎年金を優先支給とし、児童扶養手当は、障害基礎年金と児童扶養手当を比較して差額がある場合のみ差額分が支給されます。

ただし、差額の算出方法が改正されることになりました。

これまで

今までは、障害基礎年金を受給している人は、児童扶養手当の受給要件に該当していても、ほとんどの場合、児童扶養手当を受給できませんでした。これは、「子の加算部分を含む障害基礎年金等の全体の月額」と「児童扶養手当」とを比較することになっていたからです。

令和3年3月改正後

改正後は、「障害基礎年金のうち子の加算部分の月額」と「児童扶養手当」とを比較することになりました。

これにより、児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の額を上回る場合 、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました。

 

児童扶養手当の改正

(出典:ひとり親のご家庭の方へ、大切なお知らせ|厚生労働省

なお、障害基礎年金等とは、国民年金法による障害基礎年金、労働者災害補償保険法による障害補償年金などを指し、厚生年金保険法による障害厚生年金は含まれません。

所得の計算方法も改正

令和3年3月の改正により、所得制限に関する所得の計算方法も改正になります。

児童扶養手当の所得制限を計算する際の所得とは、地方税法の非課税所得以外の所得としていますが、今回の改正後は、障害基礎年金等を受給されている方については、非課税の公的年金給付等を含めた上で所得を算出することになりました。

 

関連リンク

児童扶養手当について|厚生労働省(外部リンク)