こんにちは。障害年金の受給を応援している社会保険労務士の小川早苗です。このサイトでは障害年金の受給に関する様々な情報をお伝えしています。
今回は、障害年金と国民健康保険との関係についてのお話です。障害年金の受給者にとって、毎月の国民健康保険料の支払いは大きな負担です。もし保険料が免除になるのならばとても助かりますよね。では、実際の保険料はどのような決まりがあるのでしょうか。
医療保険制度には加入義務がある
障害年金を受給している人は通院が必要な人が多いので、公的な医療保険に加入したくないという人は少ないと思いますが、加入しなければ保険料の負担もなくなりますから、もし加入しなくてよいなら加入したくない…と考える人がいるかもしれません。
しかし、日本では原則としていずれかの公的な医療保険制度に加入することが義務づけられています。日本は国民皆保険という仕組みを採用しており、年齢に関係なく全員が公的な医療保険制度に加入しなければなりません。
これは日本に住む外国の方も同様で、市区町村で外国人登録をして1年以上の滞在をする予定がある人は公的な医療保険制度に加入する必要があります。 (観光客などの短期滞在外国人は除きます。)
唯一の例外は生活保護の受給者です。生活保護の中には「医療扶助」という給付があり、生活保護の受給者は、医療保険制度ではなく生活保護制度によって医療費の本人負担軽減を図る仕組みがあるため、医療保険制度へ加入する必要はありません。
公的な医療保険制度の種類
公的な医療保険制度にはいくつかの種類があります。主なものは次の3つです。
- 健康保険
- 国民健康保険(国保)
- 後期高齢者医療制度
①の健康保険とは、お勤め先の社会保険制度によるもので、協会けんぽ(全国健康保険協会)、健康保険組合、共済組合、船員保険などがあります。主にフルタイムで雇用されて働く人がこれらの健康保険の被保険者になります。(企業の規模によってはパートタイムでも健康保険の被保険者にあることがあります。)また、この健康保険の被保険者に扶養されている人は、被扶養者という形で同じ健康保険制度に加入することができます。
②の国民健康保険は、①や③の対象にならない人が加入するものです。①のような被扶養者という概念はなく、幼児や小中学生、専業主婦なども含めて、対象者全員が被保険者となります。
③の後期高齢者医療制度は75歳以上(一部65歳以上となる例外もあります)が対象となるものです。①の健康保険や②の国民健康保険の加入者だった人も、75歳になると③の後期高齢者医療制度に移行します。
保険料の額の決め方
医療保険制度の加入者は、それぞれに定められた保険料を負担する必要があります。
では、その保険料の額はどのようにして決められているのでしょうか。
健康保険の保険料の額の決め方
①の健康保険の保険料は、被保険者の給与額等(標準報酬月額と標準賞与額)に応じた額になっています。ただし、負担するのは被保険者だけです。被扶養者(被保険者に扶養されている人)は個別の保険料を負担しなくてよいことになっています。また、保険料の半分は事業主が負担することになっているので、本来の保険料額の半分だけを納付すればよいことになっています。(給与から天引きされている保険料額は折半した後の半額だけになっているはずです。)
参考までに、協会けんぽの保険料額が分かるサイトをご紹介します。
国民健康保険の保険料の額の決め方
②の国民健康保険と③の後期高齢者医療制度の場合は、均等割・平等割・所得割・資産割などの合計額が保険料額になります。①の健康保険のような被扶養者という概念はなく全員が被保険者なので、収入がない人であっても保険料を負担することになります。
なお、均等割・平等割とは名称のとおり対象者全員が同じ額で、所得割・資産割とは所得や資産によって算出された額になります。ただし、国民健康保険は都道府県と市区町村が運営しているので、地域によっては平等割や資産割は課さないなど計算方法が異なる部分もあります。
詳しい保険料額の計算方法は、各自治体のホームページをご参照ください。参考までに群馬県高崎市のサイトをご紹介します。
障害年金の受給者も国民健康保険の保険料負担が必要

医療保険の保険料はなるべく負担の軽い方が助かりますよね。
まず、お勤め先の社会保険制度への加入条件に該当する場合は、障害年金の受給者であっても健康保険に加入する必要があります。保険料も通常どおり負担します。
最も負担が軽いのは①の健康保険の被扶養者になることです。しかし、被扶養者に該当するには要件があります。詳しい要件は下の記事で解説しています。

被扶養者の要件に該当しない場合は、障害年金の受給者であっても国民健康保険に加入しなければなりません。(※ 75歳以上の場合は後期高齢者医療制度に加入する必要があります。)
では、障害年金の受給者が国民健康保険に加入する場合、保険料の免除制度はあるのでしょうか。
残念ながら、国民健康保険の保険料について障害年金の受給者であることを理由とした免除制度はありません。障害年金の受給者であっても、決められた計算方法によって算出した保険料を納める必要があります。
ただし、下で紹介するように、保険料額を計算するにあたっていくつかの軽減措置があります。障害年金の受給者に限らず、要件に該当すれば軽減措置を受けることができます。
保険料の負担軽減措置

国民健康保険の保険料額は、誰もが同じ額を負担する均等割・平等割と、所得や資産に応じた額を負担する所得割・資産割との合計額です。細かい計算方法は都道府県(市区町村)によって異なりますが、以下の軽減措置は全国共通の内容です。
障害年金の額は所得から除外
「所得割」は所得に応じた額になっています。つまり、所得が多ければ「所得割」も高くなります。
「所得割」の計算の基礎とする所得とは、被保険者ごとの前年中の総所得金額等から基礎控除の43万円を控除した額の合計です。総所得金額等とは、給与所得、事業所得、雑所得、譲渡所得など様々な所得の合計額です。老齢年金などの公的年金に係る雑所得も、原則は所得に含みます。
しかし、障害年金の額は「所得割」を計算する際の所得には含めないことになっています。(※ このほかに、遺族年金や雇用保険からの手当等も所得には含めません。)
したがって、同じ額の現金収入がある人と比較すれば、障害年金の受給者は保険料額が低く抑えられることになります。
失業者等に対する軽減措置
障害年金を受給する人の中には、病気やケガによって退職を余儀なくされた人もいるでしょう。この場合、以下の2つの要件のいずれにも該当する人は給与所得を100分の30に減額する特例があります。
- 雇用保険受給資格者証で特定受給資格者(離職理由コード11、12、21、22、31、32)または特定理由離職者(離職理由コード23、33、34)であることを確認できる人
- 離職時点で65歳未満である人
この場合、所得割を計算する際の所得が少なくなるので、「所得割」が低く抑えられることになります。
世帯所得による軽減措置
世帯主および同一世帯の国民健康保険加入者の所得の合計額が一定の基準以下の場合、「均等割」と「平等割」を7割~3割に軽減する仕組みがあります。
所得基準 | 軽減割合 |
---|---|
43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下の世帯 | 7割 |
43万円+28.5万円×国保加入者数+10万円×(給与所得者等の数-1)以下の世帯 | 5割 |
43万円+52万円×国保加入者数+10万円×(給与所得者等の数-1)以下の世帯 | 2割 |
※ 所得基準の所得は、世帯主及び世帯に属する国保加入者の前年の所得の合計です。(世帯主が国保加入者でない場合でも、世帯主の所得を加算して判定します。)
※ 給与所得者等とは、給与所得を有する人又は公的年金等に係る所得を有する人です。
※ 減額判定基準日は4月1日です。ただし、新規加入世帯は資格取得日から適用されます。
※ 「所得割額の課税対象額」とは違い、基礎控除の43万円は控除しません。
この軽減措置を受けるには、世帯主と同一世帯の国民健康保険加入者が確定申告、または市県民税の申告(簡易申告を含む)をしている必要があります。したがって、収入がなくても確定申告(または市県民税の申告)を忘れずに行っておく必要があります。
なお、上記の申告が確認できれば自動的に判定されるので、保険料の軽減措置を受けるための申請は不要です。
どうしても支払いが困難な時は相談を
火災や天災などで財産に大きな損害を受けたり、本人や同居の親族の病気やケガなどで生活が著しく困難となり、預貯金等の利用できる資産を活用しても保険料の支払いが困難になった場合などには、申請によって国民健康保険料を減免する制度があります。
また、世帯主が東日本大震災により被災された場合や、世帯主が生活保護を受給している場合、国民健康保険加入者に在監者がいる場合も申請により国民健康保険料が減免される場合があります。
この他にも、市町村独自の軽減措置を設けている場合もあります。(例えば、未就学児の均等割額を軽減する制度など。)
特別な事情もなく保険料を滞納したり、相談がないまま滞納している世帯には、法の定めにより滞納処分等を行うことがあります。どうしても保険料の支払いが困難な時は早めに各市町村の担当課に相談しましょう。
関連リンク
全国健康保険協会(協会けんぽ)(外部リンク)
国民健康保険制度|群馬県(外部リンク)