- 障害者手帳を持っていなくても障害年金はもらえますか。また、障害者手帳を持っていれば、障害年金を必ず受給できると思って大丈夫でしょうか。
- 障害者手帳の有無は障害年金を受給するための条件ではありません。障害者手帳を持っていなくても、一定の要件を満たせば障害年金が支給されます。 逆に、障害者手帳を持っていても必ず障害年金を受給できるとは言えません。
手帳は障害年金の支給要件ではない
障害年金を受給するには3つの支給要件を満たす必要があります。
この支給要件の中に、障害者手帳のことは登場しません。
したがって、障害者手帳の有無に関係なく、3つの支給要件を満たせば障害年金を受給することができますし、要件を満たしていなければ障害年金は受給できません。
障害年金で満たすべき3つの支給要件とは後で述べますが、障害年金と障害者手帳は異なる法律による制度で、認定の基準もそれぞれで独自に定められています。
視力障害や聴覚障害など、障害の種類によっては、障害者手帳と障害年金で似たような認定基準を定めているものもあります。このため、障害者手帳の等級が障害年金の等級を推測する上である程度の参考になる場合もあります。
しかし、実際の認定はそれぞれの機関が独自に行っているので、障害者手帳から推測されるとおりの等級で認定されるとは限りません。
障害年金の請求手続きにおいて、障害者手帳を持っていることは、ある程度の参考にはなりますが受給の条件ではありませんし、逆に受給を保証してくれるものでもないのです。
障害者手帳と障害年金の比較
一般的に、障害者手帳とは「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類の手帳を指します。
障害年金と障害者手帳を比較すると下のようになります。
障害年金 | 障害者手帳 | |
---|---|---|
種類 | ・障害基礎年金 ・障害厚生年金 | ・身体障害者手帳 ・精神障害者保健福祉手帳 ・療育手帳 |
根拠法令 | ・国民年金法 ・厚生年金保険法 | ・身体障害者福祉法 ・精神保健福祉法 ・療育手帳制度について(通知) |
運用主体 | ・厚生労働大臣 | ・都道府県知事 ・指定都市の市長 |
等級 | ・障害基礎年金:1級~2級 ・障害厚生年金:1級~3級 | ・身体障害者手帳:1級~6級(7級は重複の場合のみ) ・精神障害者保健福祉手帳:1級~3級 ・療育手帳:重度~それ以外(自治体により異なる) |
根拠法令
3種類の障害者手帳は、それぞれ「身体障害者福祉法」「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」「療育手帳制度について(厚生事務次官通知)」という法律等に基づいて運用されています。
一方、障害年金は「国民年金法」「厚生年金保険法」で定められています。
運用主体
手帳を交付するのは都道府県知事や指定都市の市長です。等級の認定も含め、細かな運用は各自治体に任されています。
障害年金の認定は、日本年金機構からの依頼を受けた認定医による審査をもとに厚生労働大臣が行います。(実際の事務は日本年金機構や共済組合が行います。)
障害等級
各手帳の等級は、それぞれの法令等に記載されています。
身体障害者手帳は1級~6級(7級は1つのみでは対象外で、他の障害が重複している場合に使用)、精神障害者保健福祉手帳は1級~3級、療育手帳は重度とそれ以外(自治体によって、A1~B2、1度~4度など、名称や区分が異なる場合もあり)があります。それぞれに独自の基準があります。
障害基礎年金は1級~2級、障害厚生年金は1級~3級があります。
各等級の程度は「国民年金法施行令別表」「厚生年金保険法施行令別表第1・第2」に定められており、 さらに具体的な基準として厚生労働省から「障害認定基準」という通知が出ています。実質的には、この「障害認定基準」に沿って障害の程度が認定されています。
障害者手帳と障害年金を両方受けることは可能
障害年金と障害者手帳は、別々の制度であり、それぞの方の希望や必要性に応じ、両方とも受けることは可能です。
「手帳があっても障害年金の受給に無関係ならば、わざわざ手帳を申請して取得しようとは思わない。」という方もいらっしゃいますし、「手帳があると支援(例えば所得税の所得控除など)を受けられるから、手帳も申請して取得しよう。」という方もいらっしゃいます。
障害者手帳と障害年金の等級は同じとは限らない【例外あり】
手帳と障害年金の等級は必ずしも同じになるとは限りません。
例えば、障害者手帳は3級で障害年金は2級、ということはよくあります。もちろんその逆の、障害者手帳は1級で障害年金は2級、ということもよくあります。
精神障害だけは例外あり
障害者手帳と障害年金の等級は同じになるとは限らない、という話には例外があります。
精神障害で障害年金を受給している場合に限っては、障害年金と同じ等級の精神障害者保健福祉手帳を取得できるとされています。
これは、精神障害者保健福祉手帳の等級判定のために、通常は診断書を提出するところ、診断書の代わりに年金証書等の写しを提出し、受給中の障害年金の等級を利用するためです。(すなわち、診断書の取得が省略できます。)
例えば、障害年金2級の受給者であれば、その年金証書等の写しの提出によって精神障害者保健福祉手帳2級を取得できます。ただし、手帳の交付申請は必要です。障害年金を受給していても自動的に手帳が交付されるわけではありません。
順番が逆の、精神障害者保健福祉手帳があれば、手帳と同じ等級の障害年金を受給できる、とはならないことにご注意ください。
もちろん、先に精神障害者保健福祉手帳を取得し、後からが障害年金の受給が決定することはあり得ます。しかし、後から決定する障害年金の等級は、先に取得していた手帳の等級と同じになるとは限りませんし、障害年金の等級判定の資料として手帳を用いることはできません(診断書が必要です)。
- 障害年金と障害者手帳は、異なる法律による制度で、認定の基準も異なる。
- 障害年金は、障害者手帳の有無に関係なく、3つの支給要件を満たせば受給できるが、要件を満たせなければ受給できない。
- 障害年金と障害者手帳の両方とも受けることはできるが、等級は必ずしも同じになるとは限らない。ただし、精神障害で障害年金を受給している場合に限っては、障害年金と同じ等級の精神障害者保健福祉手帳を取得できる。
参考リンク
障害者手帳について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html
身体障害者福祉法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC1000000283
療育手帳制度について(昭和48年・厚生省発児第156号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9476&dataType=1&pageNo=1
精神保健福祉法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0100000123_20230401_504AC0000000104
精神保健福祉法施行規則(第23条 第2項)|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325M50000100031
国民年金法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000141
厚生年金保険法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115