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障害年金と生活保護費の関係

生活保護法の本

障害年金と生活保護費は両方もらえますか。
障害年金が優先的に支給され、生活保護費は年金額を差し引いた差額のみが支給されます。なお、1級と2級の障害年金の受給者には、生活保護費に障害者加算がつきます。

生活保護と障害年金の関係

生活保護には「保護の補足性の原理」という基本原理があります。

保護の補足性の原理とは、「まずは利用しうる資産、能力などを優先的に活用し、それでも足りない部分を生活保護費によって補う」という考え方のことです。

例えば、貯金があるならそれを使ってくださいね、仕事で収入を得られるなら仕事をしてくださいね、といったことです。

この原理に従い、生活保護の対象にある人が障害年金も受給できる場合は、まずは障害年金を優先的に受給することになります。そして、障害年金を受給してもなお足りない部分がある場合には生活保護費が支給されることになるのです。

障害年金の請求をしていない方に対しては、生活保護の担当者から「障害年金の請求をするように」と促される方も多いと思います。それは、この「保護の補足性の原理」があるからです。

生活保護に障害年金が支給されても総額は変わらない

では、生活保護を受けている方が障害年金を受けると、支給される額はどのように変わるでしょうか。

障害年金を受給すると、生活保護費は満額支給されなくなります。生活保護の額から障害年金の額を差し引いた差額のみが生活保護費として支給されます。

【生活保護の支給額】=【原則の生活保護の額】-【障害年金の額】

つまり、支給される総額は、原則の生活保護費と同額になります。障害年金と生活保護費の両方を、同時に満額ずつを受給できる訳ではありません。

生活保護単独の支給額と生活保護と障害年金の両方を受けた場合の支給額の総額は同じ

差し引かれて結局同じ額になるのならば、わざわざ障害年金を受給する意味はないと感じるかもしれません。

上述した「保護の補足性の原理」があるので、必要性を感じない場合であっても、障害年金が受給できる可能性があるならば請求する必要があるのですが、障害年金の支給を受けることにはメリットもあります。

生活保護に障害年金をプラスするメリット

障害年金の使い道は自由

生活保護費には様々な制約があります。

例えば、生活保護を受給すると、財産(土地・家屋・車・ペットなど)の所有などに制限があります。
また、医療機関の受診先にも制限があります。申請して認められれば希望する医療機関を受診することも可能ですが、申請の手間を考えると躊躇する部分でもあります。

一方、障害年金にはこのような制限はありません

障害年金は更新までは支給が継続

生活保護は、収入額が一定額を超えた場合には支給が打ち切りとなります。

一方の障害年金については、病状が落ち着いてきて仕事を始め収入が増えたとしても、次の更新の時期までは障害年金の支給が継続します。

※ 20歳前傷病による障害基礎年金の場合には、収入額の増加を理由として年金支給が停止する場合があります。

考える男性 いくらまで大丈夫?20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限を解説

障害者加算の要件になる

生活保護を受給している方に障害がある場合、生活保護に障害者加算が加算されます。

生活保護費に障害者加算が加算されると、その分だけ受給総額が増額する

障害者加算の額は、障害の程度、および生活保護における地域の等級によって下のようになります。
※ 級地区分はこちら。(厚生労働省のページのPDFが開きます。)

1級地2級地3級地入院患者
施設入所者
下記のいずれかに該当する障害のある者
・身体障害者障害程度等級表の1~2級
・国民年金法施行令別表の1級
26,810円24,940円23,060円22,310円
下記のいずれかに該当する障害のある者
・身体障害者障害程度等級表の3級
・国民年金法施行令別表の2級
17,870円16,620円15,380円14,870
生活保護の障害者加算の額

・身体障害者障害程度等級表の1~3級に該当する障害のある者=「身体障害者手帳1~3級
・国民年金法施行令別表の1~2級に該当する障害のある者=「障害基礎年金1~2級
※ 障害厚生年金3級は対象外です。

なお、障害者加算については、必ずしも「該当する等級の手帳の所持や年金の受給」を求めるものではなく、定められた程度の障害状態にあれば障害者加算の対象になり得ます

したがって、必ずしも障害基礎年金(1~2級)を受給していることは要件ではありませんが、障害者加算の要件を満たしていることが明確になります。

なお、すでに障害者加算の加算になっている方が、後から障害年金を請求する際には、気をつけることがあります。これについては後述します。(「生活保護受給者が年金を請求するときに気をつけること」をご覧ください。)

精神障害者手帳3級を持っているとき

精神障害者保健福祉手帳3級を所持している方は、これだけでは生活保護の障害者加算の要件を満たさないため、障害者加算がつきません。

なぜなら、国民年金法施行令別表の1~2級の障害状態にあるかどうかが分からないからです。

しかし、精神障害者保健福祉手帳3級を所持している方が、障害年金を請求した結果、障害基礎年金2級の支給が決定することがあります(けっこうあります)。そうすると、障害者加算が加算されるようになり、その分だけ総額が増えることになります。(※ この場合、精神障害者保健福祉手帳の等級も2級に変更することができます。)

生活保護受給者が障害年金を請求するときに気をつけること

障害者加算が取り消しとなる場合がある

上で、「必ずしも『該当する等級の手帳の所持や年金の受給』を求めるものではなく、定められた程度の障害状態にあれば障害者加算の対象になり得ます。」と説明しました。

これは、手帳や年金の手続き中であっても、その結果を待つことなく、医師の診断等により障害者加算の適否を認定してよいとされているからです。

これにより、障害年金の支給決定よりも前から障害者加算が加算されている場合があります

先に障害者加算を受けられるのですから、本来であればありがたいことなのですが、事前に知っておくべきことがあります。

障害者加算を先行して受けていた方について、後から「障害年金の1~2級に該当しない」との理由で障害年金の請求が棄却された場合は、その棄却の決定があった月の翌月から障害者加算等の認定を取り消すこととされています。

つまり、障害基礎年金の支給が受けられないことが決定した場合には、その決定時点に遡って障害者加算を返還する(または、その分が差し引かれた生活保護費の支給となる)ことになるのです。

先行して障害者加算を受けているが障害年金を請求する場合には、結果によっては、このような可能性があることを承知しておく必要があります。

支給のタイミングが異なる

生活保護費の支給は毎月1回です。それぞれ1か月分が支給されます。

一方、障害年金の支給は2か月に1回です。偶数月に前月までの2か月分がまとめて支給されます。例えば、10月~11月の2か月分がまとめて12月15日に支給されます。

このように、支給のタイミングがずれるので、金銭管理が難しくなる場合があります。

支給された障害年金は2か月分であることを念頭に置き、支給されたらすぐに全部を使ってしまうことのないように気をつけましょう。

参考リンク

◆ 生活保護制度|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html

◆ 生活保護法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000144_20201001_502AC0000000041&keyword=%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%B3%95

◆ 生活保護法による保護の基準|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82051000&dataType=0

◆ 生活保護法による保護における障害者加算等の認定について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8435&dataType=1&pageNo=1